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「顧客満足」という言葉の捉え方

吉村 功士

 



「CSや顧客満足という言葉を知らない人はもはやいないといっても 過言ではないが、”本当の”CSや顧客満足を実行しているところは 非常に少ない。」
私がお付き合いさせていただいているコンサルタントの言葉です。 私はこれを聞いてはっとさせられました。
顧客満足がすばらしいというのは良く分かっているつもりなのですが はたして本当に顧客満足というものを正しく捉えているだろうか、と いう疑問がいつもあったからです。

私が社内の勉強会で顧客満足の重要性を説明すると、ある社員は、 「顧客が”肩をもめ”といったらもまないといけないのか?」といいました。 ある意味でこの事例は顧客満足が正確に理解されていないことを 顕著に示しているといえます。
これとおなじことがいろんな会社で見られるのではないでしょうか。

朝礼や会議で顧客が大事と言いながら、クレームの報告を聞くと、 また無理な文句を言っているだけだろう、とこともなげに言い放つ 経営者、うちの客はたちの悪いのが多いから、と悪い意味で特別扱い してしまおうという社員。
言葉と行動が一致していないことに気付かないのでしょうか。

これらの例は”顧客満足”というものを本当に会社全体で進めていく には単なる思い付きやスローガンではけっしてうまくいかないという ことをあらわしている、と思います。

顧客満足を本当に実現するには、まず個々人の感性が必要です。 相手のことを思いやり、相手が今何を考えているかを捉える感性です。 そのうえに、それぞれのお客様に最適な対応をするというアイデアの センスも求められます。
これが低い人は自己満足に陥ってしまうのです。
トライアンドエラーを繰り返せない保守派の人には決して出来ないこと です。
(例えばコンビニで、いらっしゃいませ、こんにちは、というのが、人に よってはこんにちはが余計で不愉快だ、と感じる人もいる、というふうに ”感じられるか、そうでないか”、ということです。)

これらを身につけてしかも会社全体でそれを実行しようと思ったら、 トップダウンや逆ピラミッドの構造などを実現し、システムを見直さない といけません。また、意識を変える(本当の顧客満足を実行する ことが会社の業績アップにつながるということを理解させる)ための 勉強や啓発も必要でしょう。そしてこれらはなかなか社内の人間だけ では実現できないものです。

正確に顧客満足を捉えないと、その先に待っているのは、”自己満足”に よる客離れか、社員の苦労ばかりが増える、”犠牲的サービス”です。 これらは正しい顧客満足とは言えないと思います。

顧客満足の正確な意味を捉えるというのは非常に重要です。
これらを理解しないと、素直すぎる人は先の肩もみの例のようになって しまいますし、疑い深い人は先の経営者の例になってしまいます。
結局、顧客満足という活動が自分たちにとっても利益をもたらすのだ、と いう確信を持てないと、個人個人が顧客満足活動を実行しようという 動機を十分に得ることはできないのです。
そしてそのためには、”我々”はどこを目指すのか、その姿勢やポイント を明確に示し、その”基準”を、精神や考え方だけでなく行動にまで 浸透させていくことが必要不可欠であると思います。
それは非常に時間と手間がかかることだと思います。

そしてまた、大前提として利益を得るという目的も忘れてはならないと 思います。
これは汚いことでもなんでもなく、(短期・長期の違いはあっても)利益を 得られない顧客満足は、これも自己満足と言わざるを得ない、と思い ます。回り回ってそのツケはお客様にも回ってくるかもしれないからです。

顧客満足活動をする上で、お客様に選ばれた結果として、気持ちよく その対価を払っていただき、それによって利益を得、さらにその会社 が発展していく・・・、ちょうどサッカーワールドカップの最中ですが、選手 とサポーターのように一体となって、”それ”を盛り上げていければ、顧客 満足戦略は成功した、ということが出来ると思います。