『満足について考える』
エコマネー・トーク〜大学と市民のパートナーシップ〜に参加して
高橋 輝子
私たちは「顧客満足」について日々学んでいる研究会である。
しかし、今回は利害関係のあるこの「顧客」という概念を取り払い、「満足」につい
て考えてみたいと思う。
私は先日、エコマネー・ネットワークの主催するセミナーに参加した。参加目的
は、エコマネーについての情報収集とビジネスのためであった。
エコマネーとは、お金で表せない“善意”の価値を交換する「あたたかいお金」で
あると提唱者の加藤敏春氏は語っている。エコマネーを一言でいうと、環境、福祉、
コミュニティ、教育、文化など、今の貨幣で表しにくい価値を、コミュニティのメン
バー相互の交換により多様な形で伝える手段である。こうした価値をエコマネーで交
換することにより人と人との交流を促進し、結びつきを強めることをねらっていると
いう。
さて、この日会場には、行政、大学、企業、市民、学生など多くの人が会場に集
い、地域コミュニティの発展可能性をこのエコマネーからみいだそうとしていた。
パネルディスカッションの中で、エコマネーを実際に導入した大学の学生さんの言
葉が印象に残った。「エコマネーを使って人から助けてもらった時よりも、自分がで
きることで人から「ありがとう」と言ってもらった時の方がうれしかった」と。
そもそも貨幣(マネー)とは、物と物との交換からはじまったと思われているが、
人類学的には「コミュニケーション・ツール」として使われたのがルーツだという。
このエコマネーはそうした貨幣の原点にもどり、自由に価値付けできるお金があって
もいいという発想から生まれた。
「人」は必ず何かの組織に所属するものである。一人では生きることのできない動
物であると思う。会社(貨幣経済)であったり、家族(非経済)であったり。そして
第三の社会(ボランティア経済)の登場に自分の存在価値を求めている人も多くい
る。
有名なマーチン・ルーサー・キング博士の言葉の中に「人はどれほどたくさんの学
位を得たか、どれほどの金儲けをしたか問われはしない。問われるのはどれだけ多く
のことを他の人々のためにしたかである」と。
今回のセミナーに参加して、真の満足、心の充足とは、人から与えられる物ではな
く、人に与えることによって生まれる物の方がより満足度は大きいのではないかと考
えさせられたものだった。
エコマネーについては、コミュニティー・ビジネスとしての発展可能性にはまだま
だ問題点も山積みなのが現状である。しかし、環境、福祉、教育、文化などの地域発
展を考える上で有効な手段であると思うし、それを持続可能にしていくためには産・
官・学の連携は必要不可欠であると思う。
*エコマネーについては http://www.ecomoney.net/ に詳しく掲載されています。
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