「中国! そのサービスの行方 その2」
高橋 輝子
私はどうしても北京に住む若者に確認したいことがありました。
それは以前、ニュースで「北京のイトーヨーカドーがデートスポットになっている
!」と報道されていたのです。なんでも、「店員の接客マナーが行き届き、買い物を
していても気持ちがいいし、ここだと彼女を連れてきても喜んでくれる」というので
す。そして、開店前に行われる徹底した教育訓練の風景が印象に残りました。
早速、北京っ子の20代の男性、女性に聞いてみたところ、「何を言っているんだい、
デートだったらやっぱり『そごう』だよ。」と言われてしまいました。危うく報道を
鵜呑みにするところでした。
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| そごう・地下の食品売場。高級百貨店でもスーパーと変わらない品
揃えと価格。
| そごう店内、1階は化粧品売場、2階は婦人服売場
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ということで、まずは『そごう』です。量販店(スーパー)は中国に店舗をオープン
していましたが、百貨店ではそごうが初めて1998年にオープンしました。売り場面積
は、そごうグループ最大級の横浜そごうを上回り、百貨店では中国最大規模です。
同店は北京市南西部の繁華街に位置し、地下一階から地上六階までの売り場ではター
ゲット、商品分野、シーズンなど総合的に対応しています。中でもファッションへの
関心が高い25〜35歳の働く女性を重点顧客としています。平日の昼間(3時頃)だと
いうのに、若い女性はもちろんのことマダムから紳士までとても賑わっていました。
価格はほとんど日本と変わりません。ちょっとステキだなと思うニットセーターなど
は、8千円から数万円。それまで中国の物価になれてしまった私には高くて手が出ま
せん。北京の若者の平均所得が数万円と聞いていますので、高級品もいいとこです。
商品を選んでいると「いかがですか?」と笑顔で洗練された店員が対応します。1階
フロアーや店舗前の花壇も美しく装飾され、多くの人のコミュニティースペースと
なっていました。確かに、『そごう』はデートスポットのようでした。また、中国で
は高級百貨店としてのブランド認知が定着し業績も良好のようです。
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| ヨーカドー店内、もみじの装飾が秋を演出
| ヨーカドー・地下食品売場。年末のアメ横通りのように活気があ
る。
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続いて、『イトーヨーカドー』です。こちらも1998年にオープンしました。繁華街か
ら車で30分、東の郊外にあり朝陽路という大きな通りに面しています。まわりを団地
に囲まれ、地域密着型の営業スタイルです。当初は立地条件が良くないと不評の声も
あったようですが、一歩店内には入ると、ものすごい活気を感じました。夕方のお買
い物時というのもあるのでしょうが、日用品から買回品のフロアーまで、小さい子供
連れのお母さんそしてお父さん、老若男女問わずとにかく人があふれていました。平
日の日本のスーパーでは考えられない光景です。また、日本では当たり前とされてい
る季節感の演出も忘れていません。赤と黄色のもみじの装飾で統一され『秋の大感謝
祭』のPOPがいたる所に掲げられています。北京市内のお店を数多く見てきました
が、この演出はイトーヨーカドーが初めてです。驚いたのが食品売場です。まるで年
末のアメ横通り。若いアルバイトの子供たちが声を大きく張り上げ、自分の担当する
売り場の商品を一生懸命売り込んでいます。買い物をするお客のカートも商品でいっ
ぱいです。10台あるレジにも、すべて7・8人に並び、さぞや店員も無愛想なのかと
思いきや、レジを打つ前に一例をして「いらっしゃいませ」、そしてお釣りを渡した
後の「ありがとうございました」のあいさつには驚きました。教育訓練の徹底ぶりは
日本以上だと思いました。
北京の若者が言っていたように、確かに『イトーヨーカドー』はデートスポットとは
違うようでしたが、確実に地域の人々に受け入れられていることを実感しました。
北京市内は今、WTO加盟、そしてオリンピック開催を目前に、外資系企業の参入が続
いています。建設ラッシュとクリーンな街づくりを掲げ10年前とは大きな変容を遂げ
ています。
一緒に旅をした中国人の友人は、「中国もこれからはもっと日本のサービスを学ぶべ
きだ」と語っていたのが印象的でした。国際都市にふさわしく、次はハード面からソ
フト面への変容を遂げるときが来たのかもしれません。CS研究会の活動範囲もそろ
そろ中国参入を考えるときが来ているようです。
2週にわたり読んでいただきましてありがとうございました。
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