治験体験
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三原 文乃

ここ数年、治験のテレビCM、新聞広告を目にすることが多くなってきた。実際に治験をする人ってどのくらいいるのだろうかと、漠然と思うことはあったが、我が家にその治験に協力してくれませんかお願いがあるとは、考えもしなかった。
我が家の息子(12歳)は、季節の変わり目になると、毎朝鼻が詰まり、起きるとともにティッシュを何枚も手に鼻をかむ、つまりアレルギー体質である。赤ちゃんの頃から通っている耳鼻科に、9月に行ったところ、「お母さん、ちょっとお願いがあるんだけど。」と先生(女医さん)に言われた。「子供の治験を当院が引き受けて、今日たまたま治験コーディネーターの方もいらしているから、お話を聞いていただけないかしら」との事。骨髄バンクのコーディネーターは知っていたが、治験コーディネーターという職業があることも、子供も治験対象者になることも、全く知らなかった私は、息子に「取り合えず、お話聞いて見ようか。」と説明を聞き始めた。
コーディネーターは看護士の資格をもっている方で、製薬会社の人間ではなく、治験を専門にやっている会社の社員で、製薬会社と医院と治験協力者との橋渡しの役目をするとの事だった。そして、治験の参加に対して、詳細を説明してくれた。
薬は既に認可されているが、それが鼻詰まりにも効くのか確かめたい、対象になるのは4歳から14歳だが6週間程、日記を本人につけてもらうため、息子くらいの年齢が適当だということ、アレルギーでもハウスダスト、ホコリに反応があり、他のアレルギーに反応がないこと、副作用の話等々。子供にもわかりやすく子供用のパンフと保護者用のパンフを渡された。また、治験に協力した方に支払われる金額、必要な検査についても説明した後、何日間か検討くださいということで、その日は帰宅した。
息子と良く話しをして、4歳くらいからアレルギーの検査をしていないこと、久々アレルギーの検査をして、対象にならないなら治験参加にはならないので、取り合えず血液検査は受けることにした。なんと、結果は対象にぴったりということで、結局治験に参加して先月、6週間の期間が終了した。薬も息子には、たまたま本当の薬(なんにも薬が入ってない粉もある)が渡されたようで(薬の成分は医師もコーディネーターも知らない)、鼻の調子もとても良くなり、医師にはこの薬はやはり効果があるのねと頷かれて、けっこう長かった6週間が過ぎた。
この治験の話を職場でした時、子供の治験をまかされる医院はかなり信頼できる医師だと言われたことも協力した一つの理由だが、このコーディネーターの説明が、非常に上手だったことも大きい。今後も治験は広まると思うが、コーディネーターの果たす役割は大きいと思った。自分でなく、息子が治験協力者になり、親子ともども疲れた6週間だったが、なんだかあまりできない体験をしたのかもと感じている。そして、息子には治験の協力費が支払われていないのに、そのお金を見込んで、以前から欲しかったPSXを買わされるというおまけもついた。
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