TOPICS39 もどり
☆タイトル:ガソリンスタンドのCSと調査員の心得
高橋 輝子 |
ところで、ガソリンスタンドがSS(サービスステーションの略)と呼ばれていることは、みなさんもご存じだと思います。その理念とは「お客様(生活者)の満足を第一に考え、安心していただけるサービスを提供する場所」ということです。 しかし、ガソリンスタンドを利用したことのある人なら誰でも体験したことがあると思いますが、私たち生活者の意志を無視した過剰なサービスや車関連商品等を売らんがためのセールスを受け、不快感を受けることもしばしばあります。 この調査は指定のSSに一般客として入店し、そのSSが生活者にとって、よりよいサービスを提供しているかどうかを評価・診断し、店舗育成に向けたアドバイスをしていくものです。評価した調査票は、早いタイミングで各SSにそのまま提出され、即、改善行動に移される仕組みになっているのです。 調査の方法は、該当SSと競合SSを1組とし、同じ日、同じ時間帯に一般客として入店し、ガソリンを10L給油します。入店から出店までの間に、調査項目に従って評価・診断していきます。 一見、簡単そうな調査ですが、これがまたひと苦労でした。 調査項目は、「基本サービス」、「クレンリネス」、「接客力」、「セールス活動」、「店頭訴求力」など40項目におよびます。これらを入店してから5・6分のうちにチェックしなければなりません。また、覆面調査のため調査員と感づかれてはいけないので調査票を見ることも出来ません。すべて頭の中に入れておく必要があります。 また、10Lの給油(満タンにするのが一般的)にも係わらず従業員に質問を投げかけたり、清掃状況を見るためにトイレを借りたり、人騒がせな客を演じなければなりません。小心者には向いていません。私は申し訳ないとの思いから、やけにニコニコした愛想の良い客になっていました。(普段は全然無愛想です。) この調査を通して、従業員教育の重要さを再認識させられました。 それは数q間隔で存在するSSでは1円でも安いところに客は集まります。しかし、価格での差別化を図りにくいSSでは、従業員の接客・コミュニケーション力がCSを増加させ、それが他店との差別化となります。入店時の素早い対応、そして深々頭を下げた後のさわやかな挨拶、たとえ10Lの給油であっても窓拭きの丁寧なことには変わりありません。従業員教育の行き届いたSSは、清掃状況も良いのはもちろんのこと、店舗全体に明るさがあります。出店するまで非常に気分がよく、「また、来店したい。」という気にさせてくれます 逆にコミュニケーション力が低い店舗は、入店時の第一印象が暗く、従業員の対応の遅さや無愛想さに苛立ちさえ覚えます。 全国石油協会の調べによると、全国のSS数は平成6年の60,421件をピークに徐々に減り続け、平成11年は55,153件、東京都内においては2,412件となっています。 また、対売上高営業利益率で赤字となったのは、自社運営が54%、リースが71%となり経営状況の厳しさが浮き彫りになっています。 皆様の地域でも廃業になるSSを目にする機会は多いはずです。このような競争下、SSでは他店との差別化を図り、生き残りをかけねばなりません。 また、最近では地球環境の保全を目的にCNG(圧縮天然ガス)、メタノール、電気など新エネルギーを使った自動車の普及・開発が進んでいます。石油業界では、全国のSSにこうした新エネルギーの供給施設を併設した「エコ・ステーション」の設置を進めています。 また、阪神大震災で電気やガスなどのライフラインが寸断された中で、堅牢な構造のSSの多くが致命的な被災を免れたことからエネルギーの供給拠点として活動を維持できました。この経験から国は災害時に被災した住民へのエネルギーや水などの供給拠点として「災害対応型SS」の普及を支援しています。 今回の調査には、こうした環境配慮型・災害対応型の調査項目はありませんでしたが、今後は重要項目となっていくことでしょう。 さて、私にとって今回の調査はこうして得るものも大変多かったのですが、一番苦労したこともあります。 私はこの日、4店舗のスタンドを回ることになっていました。しかし、よく考えてみると4店舗で10Lずつガソリンを入れると40Lを一日に入れることになります。私の愛車イプサム(トヨタ)は50L入りまが、それはガソリンが空の時の状態であって、この日、出発の時点で車のガソリンメーターは半分を指していました。よって、2店舗目を回ったときには既にガソリンが満タンになってしまったのです。残りの2店舗はすぐ近くにあるにもかかわらず、ガソリンを減らすためにあと150km走らなくてはなりません。しかたなく、都内から埼玉にぬけ千葉、茨城を回り再び都内の調査対象のスタンドに戻ってきたときには調査開始から8時間が経過していました。長時間の運転で腰は痛くなり、目はかすみ、調査を終えた満足感よりも家までたどり着けるか心配でした。そして家近くのカーブでまさかの出来事が?!というよりは案の定・・・★☆。 路肩にタイヤがぶつかり、ホイルカバーがひん曲がってしまいました。(新車だったのに・・・。)幸い大事には至りませんでしたが、さらに疲労感が増したのは事実です。 今後、同じような調査を経験する皆様、事前準備を怠らず(この調査の場合、ガソリンを減らしておくことも)、そして家に帰るまでが調査であることを忘れてはいけません。 |