TOPICS28  もどり

☆タイトル「 大豆からみた農業の問題 (第二回)」  
島村 治雄

第1回からもう3週間がすぎて穴をあけてしまい 申し訳ありません。
第1回で日本の大豆文化を大切に、と説きましたが、 日本の調味料の醤油は地方ごとに隠れた名品が多くあることを 聞いています。ベトナムの魚醤、タイの香草、インドの香辛料と 比肩しうるもので、また精進料理という大豆蛋白をもとにした特別な 分野も切り開いており、日本食の原点にかえりグルメ追及の方向を みなおすことが必要ではないかと思います。
特に、最近の研究では大豆蛋白のなかの『イソフラボン』という成分が 骨密度を高める働きがあることがわかり、骨そしょう症に有効といわれています。
骨そしょう症は最近女性に多く見られますが、そういえば昔はこのような病気は あまり聞かなかったようにおもいます。昔は粗食になれているなかで大豆蛋白の摂取は 多かったからではないかとおもいます。女性の方々へとくに大豆蛋白の摂取をお勧めします。

ここまでは消費側での問題点でした。今回は行政、農家についての問題点を述べて見ます。
農業の行政は今までは一貫して米行政といってよいでしょう。日本人には米、稲、については特別の思いが伝えられています。お米には八十八の苦労がこもっているから大切に、と残さず食べるように注意されたり、学校でも米の生育過程を学ぶことで、稲作の実態を知らない人はいないでしょう。確かに麦、とうもろこしなど他の主食より単体での栄養成分は優れており、米を主食とする食事では主食の比重は副食に比べ高くなっています。小生は病気のために食事をすべて計量していますが、一日の全たんぱく質のうち米で取るたんぱく質は40%〜44%になっています。洋食ではパンでとるたんぱく質はせいぜい10%から15%程度ではないでしょうか。したがって米を大切にし、増産への研究を惜しまなかったのはわかります。それと今から140年前までは米を名目賃金をとしている江戸時代でしたから、連綿と続く米への特別な意識はやむをえないことかもしれません。 しかし、米への特化は米あまりを引き起こし、減産、減反行政への施策変更を余儀なくされています。その一方では米中心施策の長期計画である干拓計画が中止されずに新たな問題を発生させているという混乱した状況になっています。 大豆から見ると、減反の代替作物として80年代はすこしづつ増加していましたが、94年の米の不作を境に落ち込み(ということは大豆転作から米への再転作があったということです)、まだ80年代の生産量には回復していません。つまり米中心の農業政策を別のスタイルに変える明確なベクトルが確立されていないといえます。しかし、今まで米を中心とする統制施策、補助金施策で行われているのを、市場経済をもととする農家自立へ変換しようとする意図は十分みることができ、大豆フォーラムに小生が招かれたのも、農家の意識を変えようとする動きから出てきています。農業政策の変革は一挙に起こるわけではありません。一つ一つの細かい施策、意識変革の細かい努力、総合的な仕組みの変革を伴い、多くの痛みをもともない 続けられるべきものと思います。 今必要なことは農業政策の将来のビジョンを明らかにして、全体の方向付けをはっきりさせることであろうとおもいます。

この変革は農家の意識変革でもあろうと思います。多くの農家は今までの行政、農協を通じての統制、補助金施策に特化して、市場経済になかなか組み込めなかったのですが、行政の政策転換、農協の合理化による支援体制の緩みにより、いやでも市場経済のなかにはいって自分たちで意思決定する要素が増えてきていると思います。そこでの問題は先般の大豆フォーラムの質問でも、『農家はどうすればよいのか端的に教えてくれ』という虫のよい質問が出てくるように、自分たちでの意思決定をするに必要な情報がすくなく、そのための訓練ができていないことです。まず、スタートはお互いに知ることです。情報は自分たちから発信することで、それに関する情報をもらうことができます。米については全日本人が知悉しているのですが、それ以外の農業全体の姿、畑作物の実態、畑そのものをもっと知らせる努力から始めるべきでしょう。大豆はどんな姿で生育するかわかっている消費者はいないと思います。『嫁より先にベコが来た』という本で農林省キャリアであった女性が岩手に研修に行って牛の飼育から惹きこまれ、農家の嫁となり農家の実態を描いた本がありますが、そこからわかることは労働力のすくなくなり、高齢化の進んだ農業では村落単位で共同して、農薬を撒いたり、刈り入れを行ったりしなければならない状況のようです。土地は私有財産ですが、そこから生み出す農産物は、村落単位の共同作業による力が大きな比重をしめているようです。こんなことを話しながら、農家の実情、問題点を消費者に周知させ、農業の正しい姿を知ってもらい、そこから消費者の意向、顧客満足を引き出して、農家の方向付け、商品経済への成功を求めることが必要であろうと考えます。 食文化は土地の文化であり、自然と人を結んでいる組織の文化でもあります。
消費者も生産者も行政も、これからの食生活、それを維持していく仕組みについて、もっと、もっと語り合うべきではないかと思います。
大豆を元に、消費者、行政、農家、土地のかかわりをブリーフィングいたしました。