TOPICS26  もどり

☆タイトル「ボケ老人に対しても「CSが必要なんだ!!」  
手島 伸夫

介護保険が開始されて1年も経たないうちに、鳴り物入りで参入した大企業のサービ スの縮小と撤退が始まっている。と言っても、お立ち台とかいってディスコで娘達 にパンツを見せさせ儲けた経営者や大手学習塾が、介護は思ったほど儲からないと 計算した行動であるだけだが・・・。

そんな一方で、堅実に「日本一の特別養護施設」を目指して昨年4月に開設した のが『クロスハート栄・横浜』(045-896-1233施設長:片山聖子)である。樹木に 囲まれた高台に、45部屋・定員120名で、鉄筋3階建ての明るい、すばらしい施設 で、ここが障害を持つ老人や痴呆症老人だけを受入れ、介護の一番困難な最前線を 守る所であるとは思えない。その組織は、片山さんの下に各主任とスタッフ長がい るだけで、顧客の情報が早く正確に伝わるようにフラットにしてある。

 開所に当たって、ほとんど素人ばかりを集めたスタッフ教育がおもしろい。全員 で開所式にギターを弾くための練習が主で、その日の成功は、皆が感動したとい う。しかし、それは怪しげなガンバリズムでは無く、人との触れ合いを体験させる 重要なポイントであったようだ。だから、20〜30才代の若いスタッフ全員が、我々 訪問者にも元気いっぱいの挨拶をくれる。

 クロスハート栄のコンセプトはシンプルで「楽・清・永」しかない。さて、その 「楽」は、老人を折り紙と童謡で赤ちゃん扱いするのでは無い。痴呆の人であって も「ドライブ、月見の会、ダンス、あるいはビアーガデン」など、大人を対象にし たレベルのプログラムを実行して、人生の先輩に対する尊厳に配慮した内容であ る。片山さんは「老人にとって自宅が一番のはず。だから、施設に入ったからこそ 楽しめる仕掛けを考えなくては…」と言う。
 例えば、音楽のみを担当する「音大卒の専門スタッフ」を雇って、昭和20〜30年 代の曲をピアノと一緒に歌い、障害で動けない人には、枕元のギターで思い出の曲 を演奏する。「衛生専門スタッフ」は週5日間常勤して髪を切り、歯磨きは「歯科 衛生士」が手助けを行い、「マッサージ士・フッドケアー専門家」などさえ常駐さ せ、クリーニングはもちろん外注し、高齢者にふさわしい清潔さを保つ仕組みを維 持させる。

 実は、これにより「介護スタッフ」が、肝心の介護に専念できるようにしたので ある。「日本一の特養」を目指す徹底的なシステムを作り上げるには、若い片山さ んの並々ならぬ“想い”がある。片山さんの実母は、新しい切り口で老人施設「伸 こう会」を運営・発展させてきた。バブルで不用になった企業の社員寮などを安く 利用する工夫と同時に、ISO9000を取得し、介護サービスの均一化と情報公開を行っ ている。そんな背中を見ながら、高校時代をアメリカのハイスクールで過ごし、さ らにウィスコンシン州立大学で福祉を研究してきた彼女の、開かれた介護に対する “想いを込めたシステム”創りである。

特別養護老人ホームは、ボケ老人が集まってくる。そのボケ老人を、どうせボケて いるのだからとは考えずに、人としての尊厳を持って接しようとする片山さんの哲 学がすごいと思う。こんな形で「ボケた老人に対してもCS」を持って仕事を遂行 しているのである。