TOPICS13  もどり

タイトル:CS研究:「患者としてでなく客として」 
手島 伸夫

http://www.dab.hi-ho.ne.jp/tejima/

 
 1年ぶりに、行った場所で、あなたを覚えていて挨拶をされることがありますか。レストラン、ホテル、ブティックなど世の中には色々な商売があるけれどあるけれど、そんな経験を「人間ドック」でしたら、あなたの驚きは、そのドックに対する賞賛に変わるでしょう。なぜならそれは大変なことで、あそこは年に1回きり、しかも、みんな同じ様なガウンを着ていて、顧客の個性は分かりにくいのですから…・。その日、以前にエスコートしてくれた“チャーミングな高柴由紀さん”が、「手島さん、こんにちは」と声をかけてくれた時は、僕は驚いて声が出ませんでした。そうでしょう、毎日いろいろな人をエスコートしている高柴さんが、同じガウンの僕をどうやって覚えていて、識別したのでしょうか。だから僕の方が「あ〜!た・た・高木さん」と、名札をつけている「高柴さん」のお名前を間違えてしまいました。 これは、CSとかワン・ツウ・ワン・マーケティングと声高に言うより、ずっとすごいことだと思いました。

 話は3年目に遡ります。そのころから70kgを超えてしまった私は、いつも奥様から「ブタまんおじさん」なんていう“差別用語”を投げつけられて、じっと我慢をしている毎日でした。しかし、奥様からとうとう「私が行っているドック、渋谷のPLに行きなさい」と命令される始末。私が無視していると「あなた好みのかわいい女性がエスコートしてくれるのよ」と“悪魔の囁き”をするではありませんか。そこは僕の悲しさ、条件反射で訪れてみたのが渋谷のPL健康管理センターでした。
(※PL健康管理センターの連絡先 03-3469-1161)

 本当は、僕は本当は「PLというのは、宗教団体だからいやだな!」と思いながら行ったのです。まず受付けで看護婦さんが初回訪問者の私の所に来て、親切に教えてくれましたが、これはは普通でしょう(??)。次にロッカーの鍵を受け取り着替えの部屋に、エスコートの女性が、中まで案内してくれました(僕、パンツだけになってしまったけど、恥ずかしいマイッタナ〜)。この人がすごい美人、女優「清水美砂」を10倍美人にしたような、チャーミングな人でした。(ズ〜ズ〜、よだれ!)。着替え終えて1階降りるとそこは広いロビー。灯りはステンドグラス系の間接照明とローズウッド調の落ち着いた家具が並び、まるで高級ホテルか高級クラブ。エスコートの女性は40人ぐらい、みんなキビキビとした動きですが、ピンクを基調としたワンピースが制服で、緊張を和らげてくれます。

 さて順番がきて、先ほどの美人エスコートの人が、バラバラにいた7−8人に対して、IDカードをいれたポーチをいきなり個々人に正確に配りはじめました。「○○さん、△△さん、手島伸夫さん。」しかも配る相手と名前を迷わないのです。これには私も少なからず驚きました。私と彼女は初対面なはずです。これ以後この半日ずーっとフルネームでエスコートしてくれたのですが。私など、名刺交換したばかりの相手の名前を忘れてしまう事もことも、しばしばなのですが、“同じようなガウンを着た”しかも初対面の客を間違えたり、迷ったりする事が無いのは、すごい事です。

 良く見ると他のエスコートさんも同じように客の名前と顔を全部覚えているのです。普通、他の人間ドックは「次の方」とか、囚人みたいに「15番さん」と番号で呼ばれたりしますね。興味を持った私は、早速彼女に「名前を覚えるコツ」を聞きました。彼女が言うには「お客様がロッカーにお入りになった時から、一生懸命覚えるのです。特別に訓練なんていうものはありませんわ。(ニッコリ!)」   (^_^;; マイッター!!

 さて、検診もスムーズ、やはり彼女たちの役割は大きいものがあります。検診の時も、普通の病院のように「3人さん中にお入り下さい」なんていう事はしないのです。一人ずつ「手島伸夫さん、次はあちらの“聴力”にどうぞ」といった風なのです。またバリュームレントゲンの前では「ここは混み合いまして、15分ぐらいの待ち時間になります。」と教えます。だから安心して本を読んだり、居眠りができるのです。バリュームやエコーでは、医者と同じテレビ画面を客が見ることができ、良く説明してくれます。胃の中までゴクン・ゴクンとバリュームが落ちてゆくのまで見ることができます。しかも、女性の検査士が、「仰向けになって、ちょっと横を向いて下さい」なんてやさしく指示してくれるのです。(僕なんか、ベッドで女性に指示されるのは初めてです。→コラコラ勘違いするな!)

 しかし、ここの優れている所は、本当は見えない所にあります。まず、検査自体全部ここで処理しているから、すこしでも疑問のある内容は「すぐにとことん突き詰め」られということです。だだし、自社で検査する費用は、外注の約3倍かかっているそうです。検査を含め医療本体の関係者が約200人いるそうで、一日の検診者が350人程度ですから、お客2人に対して裏方が1人いる勘定になります。また、女性のためちゃんと要所に女医さんを配置して心理的負担を和らげる工夫をしているので、若い女性客が普通のドック以上に多いのです。最後の医師の面談でも「河上 裕先生」は、ニコニコしながら懇切丁寧に、僕の質問にも良く説明してくれました。さて、このドックでは「個々の検査の項目」は、それぞれ専門医が判断して、それをを答えるのだそうです。そのことにより、いつ受診しても、同じ答えが専門医から帰ってくるシステムで、その都度、医師により判断が異なるのを避ける工夫をしているのだそうです。

 人間ドックでは、豪華な昼食を競う時代が一時ありました。しかし、ここでは昼食を出しません。その分検診本体に費用を掛けているのです。実はここは昭和45年の開設で、知る人ぞ知る有名なドックだそうで、芸能人などずいぶんお世話になっているそうです。(知らなかったのは、僕だけか。)普通、人間ドックでは体の様子を見る所だから、どこか悪い所が見つからないか緊張しています。ここは「患者としてでなく客」として「安心してくつろぎ、リフレッシュできる」ドックでしょう。あなたも一度行ってみませんか。地方からでも出張に合わせてお出かけになる価値はありそうです。

 今回、日曜日にもかかわらずエスコートしてくれた、かわいい見習の「池上 文さん」ありがとう。彼女も小首を傾げながら「お名前は、一生懸命覚えるのです。だから、時々間違えることもあります。」と話してくれました。なんだか嬉しいですね。

 僕が仙台から、はるばる東京の渋谷まで行くのは検査するためではありません。ここでの経験は、自分が健康なのを、ゆったりした気持ちで確認し、明日からの仕事に出発することが出来るからです