高橋 輝子

こんなケースを想像してみてください。
あなたはパソコンショップに来ています。気に入ったパソコンを前に、「20万円かあ。ちょっと高いなあ。2万円くらい安くならないかなあ。」と値引き交渉を考えます。
顧客「このパソコン、2万円引きにならないですか?」
店員「はい。了解しました。2万円引きにしましょう。ではレジにどうぞ。」
と、なんの躊躇なく店員が値引き交渉に応じ成立してしまったらあなたはどんな印象を持ちますか。
「あれっ?もしかしてもっと値引きできる商品だったのかなあ?3万円って言っておけば良かったかなあ・・・。」と、交渉はうまくいったのに何となく納得できないまま購入してしまうはずです。
もし、交渉の展開が以下のような場合だったとしたらどうでしょう。
顧客「このパソコン、2万円引きにならないですか?」
店員「う〜ん。厳しいですね。これ人気商品なんですよ。(電卓を取り出し計算する)しょうがないなあ〜今回限り、1万8千円まで値引きしますよ。」
という展開であれば、あなたはきっと最大限の値引き価格を引き出すことができたと満足して購入するはずです。
この例の交渉のポイントは3つあります。
まず1つは、顧客にとって前者の例の方が2千円分得したはずなのに、顧客満足は後者の方が高いという結果になっています。その後、商品に対して何かちょっとした不都合が生じた場合、納得しないで購入した前者の方はクレーム発生率が高く、納得して購入した後者ではクレームを言いにくいという人間の心理を付いた例です。
2つ目は、顧客の納得感、満足感を引き出すためにはひと手間かけるテクニック(交渉術)が必要ということです。後者の例では、「人気商品である」という商品の希少価値の情報を与え「電卓をたたく」という動作を入れることで一生懸命あなたのために考えていることをアピールしています。
3つ目は、強気と弱気のパワーバランスが逆転している点です。通常は、売る側が弱気の立場で買う側が強気の立場です。しかし、後者の例では、「ここまでしてあげたのだから十分でしょ。」という具合に条件を譲歩した点で売る側は弱気から強気へパワーバランスが転換されているのです。
満足を提供する私たちは常に顧客とWIN-WINの関係を築く交渉術を学んでいく必要があります。無防備のままでいると知らず知らずのうちに相手の戦術にはまり、LOSE-WINに終わってしまうこともありますし、最悪なケースだとLOSE-
LOSEに陥ることもあります。
重要なことは、相手と自分の利益を模索する努力につきます。
余談ですが、先日、靴を買いにデパートに行ったのですが、店員さんの戦術にはまり、結局、靴とサンダルの2足を購入してしまいました。靴もサンダルも両方気に入って履いていますので、これはWIN-WINの関係といえるでしょう。
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