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地域経済活性化の鍵?!

高橋 輝子





先日、夜のニュース番組で「地域経済活性化」について特集が組まれていた。

番組の後半で経済評論家が日本列島の地図を指しながら、首都圏の「好調組み」と、 関東から西、福岡まで延びるものづくり地帯を「持ち直し組み」、そのほかの地域は依然厳しい「低迷組み」とし、日本経済の3極化を説明していた。

  そして「地域経済活性化」のキーワードとして、「国際経済化」と「持続可能な経済圏の創出」の2つをあげていた。前者はトヨタの城下町である名古屋の活況とアジ ア圏に近い北九州を例にあげていたが、これらは限られた地域での発展可能性であることも示唆していた。そこで大方の地域が目指すべきものは後者であり、熊本県の黒 川温泉が例にあがった。ここでは首都圏から多くの人が流れ、その地域にお金が落とされている。落とされたお金はその地域内で回わっているという。この好循環サイクルが必要であることを主張し特集は終了した。

  言っている事はもっともなのだが実感として涌いてこない。そのため以前訪れたことのある黒川温泉での従業員との会話を元に考えてみることにした。


 <シーン@> 組織力
  〜バスの停留所からホテルへと送迎してくれた運転手さんとの会話〜

  「黒川温泉の名物に温泉手形ってありますよね。手形を購入すればどの旅館の温泉に も入ることのできるやつ。あれって組合が仲良くないと絶対にできないんですよ。旅館のお風呂はいわば人間の心臓と同じですからね。その心臓部を他の旅館の宿泊者に見せてしまうわけですから。よほどの信頼関係がなければ無理ですね。」

 なるほど組織力の強さである。商店街低迷の要因のひとつに組織力の弱さがよくあげられる。以前、仕事で全国の商店街をヒアリングしたときにも、責任の擦り合いや自己防衛意識のぶつかり合いを耳にしたものだった。屈託のない笑顔で組合の仲の良さを話してくれた運転手さんのおかげで、これから始まろうとしている旅への期待がさらに高まったものだ。


 <シーンA> 地元への愛着
〜温泉を出たあとに向かったバーでの会話〜

  「バーテンダーの仕事は夕方からの仕事でしょ。昼間は何をやっているかって。もちろん温泉めぐり。ここの温泉ももちろんいいけど、この周辺には他にも効能のある鉱泉がたくさんあってね。この辺の人たちはね、地元のおいしいものをたくさん食べて 毎日温泉に入る。だからみんな美人でしょ。ハッハッハ。」

 豪快な笑いで一方的におしゃべりしていた女性のバーテンダーさんは、孫の話も出てきたことから50代以上と思われる。が、つやつやの肌がおそらく実際の年齢よりもかなり若い印象を与えている。ここでの仕事そのものとその代償である賃金は彼女に 潤いを与えているのだろう。そして何よりこの地域を愛し、そして誇りに思っていることが会話の節々から感じられた。


 持続可能な経済圏をつくるためのサイクルについて、他の言葉で代用するならば『地域のブランド化』であろう。

最近は企業だけではなく、農産物や黒川温泉のような地域でもブランドの重要性が叫ばれている。そのメリットとしては、ブランドの価値がその地域のイメージを向上さ せ、他の地域に対しての参入障壁となり、競争優位を確立するための基盤となる。このことはその地域で生産、提供される商品やサービスが価格競争に陥ることなく安定 的な売上げを保障する。地域が潤えば自然と人も集まってくる。

 ブランドの構築で大切なのは小手先だけの販促ではなく、地域をあげての戦略であろう。が、しかし、地域は企業と違って、いろいろな考えや性格を持った組織・個人の集合体である。考えをまとめるだけでも相当の時間と労力を費やす。困難極まりないものである。

  その点、黒川温泉には組織力の強さがあり、従業員が誇りを持って仕事に従事し、 地元に愛着をもっている。そこには雇用がありそしてお金が流出しない要素があるのだろう。

  昨年大ヒットしたはなわの佐賀県の歌やアルビレックス新潟のサポーターなどをみていると、地元を愛する心は若い世代にも確実に脈打っているものなのかもしれな い。