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過剰品質のはなし

柄澤 明久



私の住んでいるマンションで、セキュリティシステムを入れ替えることになりました。
現在はエントランスで訪問者が部屋番号を押すと、リビングのチャイムがなって、インターフォンで会話をする仕組みです。 そして電気錠ボタンを押すとエントランスのドアが開きます。

管理会社の社員の説明によると、新システムでは画面に訪問者の姿が映るようになるということです。 つまり戸内の受話器にモニターが付くわけです。
説明によるとモニターの解像度が非常に高く、かつ広角機能がついていて必要に応じてワイドに写せ、 また録画機能やプレーバック機能がついているなど相当に高性能です。

高性能はいいのですが、一台が69,000円もするのです(パンフには定価138,000円と表示して、 これは景品表示法に抵触するのではないかと思いますが、今は措いておきます。 この受話器のメーカーは誰でも名前を知っている大手企業です。)
この受話器は各戸に一台必要ですから、全体としては結構大きな金額になり、工事全体の費用の4割を占めています。

モニターでは要するに誰が来たか判ればいいので、そんなに高性能は必要ないと思いました。 そこで私は管理会社の社員にそんなに高性能はいらないので、もっと安いのはないかと質問したこところ、ありません、 との答えでした。
新システムの説明会は2回あり、私は大事なことなので、2回目にも同じ質問をしましたが、 やはり「ありません」との返事でしたから、本当にないのでしょう。

その時、私はこんなモノ作りをしているから、日本のメーカーは海外で負けていくのだな、とつくづく思いました。
いろんな機能を盛り込みたい気持ちはわかりますが、 使いもしないあるいは使いきれない機能を製品に付加していくのは単なる設計者の自己満足にすぎません。 多機能・高性能の結果価格も高くなり、海外の製品との競争力を失っていくのです。

たしかに日本の製造業の生き残る道は、低価格戦略ではなく、高品質戦略です。 それには外国の企業では実現出来ない新たな技術や機能を開発することが求められます。 しかしユーザーの求めている品質以上の品質を盛り込んでもそれは意味がないのです。
このモノ作りに関しては設計者の責任だけではないでしょう。消費者ニーズの把握を含めたマーケティング部門全体の、 さらにいえば経営者の責任でもあるといえます。
消費者が真に求めていることを探し求めて製品作りに活かすという、当たり前の基本を忘れてはならないと改めて思います。