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CSの観点から見た外食産業での肉類のメニュー表示のあり方について
〜 牛脂注入肉、成形肉等 〜


川井 信友



1.ホテルのレストランでの食材偽装問題発生

去年の10月に、大阪の名門阪急阪神ホテルズのレストランの食材偽装問題が発覚した。 芝えびやフレッシュジュース等の問題もあったが、肉類としては「牛脂注入肉を霜降り肉」として、 安い肉を高級食材だとメニューに載せていた。社長は「意図を持って、誤った表記を得ようとして利益を得ようとした事実はありません」 「仕入れが変わった時にメニューをそのままにした」「知識不足だった」と言い続け、「偽装」ではなく、あくまでも「誤表記」 だと突っぱねた。(資料1)
その他、肉類の食材偽装例としては、下記があります。(資料2)

(1)大阪新阪急ホテル宴会場
   メニュー名 ビーフフテーキ →牛脂注入肉
(2)宝塚ホテル宴会場
   メニュー名 やわらかビーフソテー赤ワインソース→牛脂注入肉
(3)グリル満天星(日本橋三越)
   メニュー名 ひれステーキ →成形肉
(4)ファミリーローズ(岡山高島屋)
   メニュー名 サーロインステーキ →牛脂注入肉

問題を起した会社の食材偽装の理由説明は下記3つに分類される。(資料3)
@グルメブームや安心・安全志向からより良く見せたかった。(優良誤認表示)
A競争が激化し、安い食材を使い利益を出したかった。
B食材を変更したのに、メニューを書き換えなかった。(誤表記)

今回、「外食産業(ホテル、レストラン、焼肉店での肉類(牛脂注入肉、成形肉、産地偽装等)のメニュー表示のあり方について」 CSの観点からの私見をまとめた。

2.行政(消費庁)の対応について

(1)改正景品表示法(消費者庁発行)の一部改正について(資料4)
今年6月6日に改正景品表示法(食材の偽装表示問題を受け、不当表示をしている業者に対する都道府県などの権限を強化する) が成立し、年内に施行される予定。
改正表示法では、不当表示への対応を敏速化するため、不当表示をしている業者に対し、これまで消費者庁に限られていた、 再発防止などを求める措置命令を都道府県でも出せるようにする。経済産業省や農林水産省などが、それぞれ所轄するホテルや飲食店、 百貨店などを調査できるようにする。

(2)「メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方について」
    (成案:ガイドライン、今年の3月に公表)(資料5)
多発した、表示と異なる食材が使用されていた偽装問題によって、消費者の安全・安心が揺るがされているので、 消費者の不安をできる限り速やかに払拭することにより、自主的かつ合理的に商品・役務を選択できるという消費者の利益を確保する為、 メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方を整理し、事業者の予見可能性を高めること等を目的に成案された。
この中で、メニュー表示に関するQ&Aで、次の内容が記載されている。

Q1:飲食店において、牛の成形肉を焼いた料理を「ビーフステーキ」、「ステーキ」と表示してもよいでしょうか。
A1:問題となります。(牛脂注入加工肉も同様の回答)
料理名として、「ビーフステーキ」「ステーキ」と表示した場合、この表示に接した一般消費者は、 牛の生肉の切り身を焼いた料理と認識すると考えられます。(誤認させるおそれがあり、景品表示法上問題)
「ビーフステーキ」「ステーキ」と表示する場合は、あわせて「成形肉使用」、「圧着肉を使用したものです」 等と記載する必要がある。

Q2:飲食店のメニューに「国産和牛ステーキ」と表示しているが、実際には、オーストラリア産の牛肉を使用しています。 景品表示法上問題となりますか。
A2:問題となります。
和牛ではない牛肉を「和牛」と表示したり、国産でないオーストラリア産の牛肉を「国産」と表示することは、 実際のものと異なるものを表示していることになり、景品表示法上問題となります。

3.食品の安全性について

今回検討する肉類は食品なので、偽装表示の他に食品の安全性の観点からの検討も必要と思う。

(1)牛脂注入肉、成形肉の安全性について(資料2)
@「牛脂注入肉」の作り方、美味しさ
・ほとんど脂のない赤みの肉(オーストラリアやニュージーランド産が多い)を、 製造工場で機械(インジェクター:下向きに長さ20センチほどの針が200本以上あり、下を通る肉に牛脂を注入する。 牛脂は国産牛の脂を精製したもので風味が良くなるアミノ酸などの添加物も入っている。)で処理した肉。加工前の肉はかたく、 かみきれないが加工後は、やわらかくジューシーで、うまみがある。
A成形肉の作り方、美味しさ
生肉や脂身、横隔膜(ハラミ)に酵素や植物たんぱくなどを加えて人口的にくっつけたもの。
形を整えるために切れ端をくっつけた簡単なものから複雑怪奇なものまでいろいろある。

(2)食の安全性について
@食中毒(大腸菌やサルモネラ菌)の問題
1枚肉なら表面を十分加熱すれば食中毒菌などの問題はないが、牛脂注入肉や成形肉は内部に菌が侵入するリスクがあるので、 中までしっかり焼いた方がいい。適切な表示が不可欠。(食品表示アドバイザー垣田達也さん)
A食品アレルギーの問題
牛脂注入肉や成形肉には乳性分や小麦、大豆由来の成分が使われることがあり、 こうしたアレルギー物質を含むことが表示していなかったケースがあった。適切な表示は必要であろう。(垣田さん)

4.CSの観点から見た私見

(1)ホテルのメニューの偽装表示について
誕生日等特別の日に、服装を整え、高いお金を出してホテルで食事をした時、 メインのサーロインステーキが牛脂注入肉や成形肉であったら、怒りたくなると思う。(顧客の期待値が高い為)
名門の阪急阪神ホテルズの社長の会見(「あくまでも誤表記」「あれが商品名」と開き直り)は、 顧客満足(CS)を考えない会社(社長)都合の発言である。
(BM賞を2回受賞したCSの高いリッツ・カールトン大阪(阪急阪神ホールディングの傘下)でも、 フレッシュジュース等の問題が発生したのは残念)

(2)レストランや焼肉店でのメニュー表示について
私の職場(新横浜)近くのレストランのランチで、1,000円のサーロインステーキ、焼肉屋では900円の焼肉定食があるが、 美味しく食べている。
メニューには表記されていないが、値段からして肉は牛脂注入肉や成形肉と思われる。私としては、暗黙の了解をしているので、 メニューに正直表記した方が、顧客の為に良いと思う。

(3)牛脂注入乳肉、成形肉の表示だけで十分?
牛脂注入乳肉、成形肉とだけメニューに書かれても、どんな添加物が入っているかわからないので、 特にアレルギー物質を含む場合はメニューに表示が必要と思う。

CSの観点から考えると、まだまだ考えなくてはいけない課題等あるので、今後CS研究会で勉強(研究)し、 最後に下記要望をまとめていければと思う。

@飲食店、業界への要望
A行政(消費者庁等)への要望
B消費生活アドバイザー&コンサルタントへの要望
C消費者への要望

資料
1.J−CASTテレビウォッチ(2013年10月25日)
・阪急阪神ホテル.メニュー偽装「あくまで誤表示」社長開き直り
2.日経電子版(2013年11月12日)
・牛脂注入肉って何?似た技法フランス料理にも
3.朝日新聞 DIGITAL(2013年11月8日)
・どうみる偽装表示 ものづくりの改善努力に学べ
4.日経電子版(2014年7月7日)
・改正景表法が成立、偽装表示対策、都道府県の権限強化
5.消費者庁 H26年3月28日発行のガイドライン
メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方について