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CS雑感(2)

〜 コールセンターとCS 〜

西村 直泰

    

今回、次回と、会社に勤めていた時の実体験からのCS雑感です。

まず、今回は、コールセンターにまつわるCS。
ここでのコールセンターは、通販会社のように、多くの顧客が、比較的繰り返し利用するというものでなく、 会社のお客様相談窓口としてのコールセンターで、一部の顧客が、 まれに利用するタイプのインバウンド専門のコールセンターについて、である。
少し特殊性があるとすれば、受付時間等の関係で、オペレーター(以下、OPと略す)が交代制であることかもしれない。 つまり、会社の営業時間外も受付しているコールセンターである。

コールセンターに転勤後、ある程度慣れてきて、驚いたことがあった。
1つは、どんな所にも、常連さんが居ることは予想していたが、OPの指名をしてくる常連さんが、意外(?)と多いことには、 やはり驚かされた。
2つ目には、男性OPが電話に応答すると、電話を切る人が居ることにも、少し驚いた。
いまだに、OPは女性に限る、という感覚の人が居るようで、その事に驚いたのだ。
慣れない私が驚いたところで、そんな事はどうでも良いのだが、では、OPやその上司のスーパーバイザー(以下、SVと略す) はどう思っているのか、興味を持って、ある程度の人に、指名電話について質問してみた。
もうひとつの男性OPだと電話が切られてしまう事は、防止のしようがないためである。

OPの意見は、賛否両論であった。
CSの観点(より正確には、お客様を怒らせないために)から、仕方ないこと、という意見が割合多く、 一方、指名をされる対象となっているOPからは迷惑という意見が出された。
SVの意見は、CSの観点(やはり、お客様を怒らせないために)から、仕方ないこと、という意見が大半であった。
一部のSVは、毅然とした態度で、指名電話は取次がないように注意喚起していると言っていた。
このコールセンターでの、もともとのルールでは、指名電話は取次がないこと、としているが、実際の運用上は、 有名無実化していた訳である。

些細な事柄だが、CSの観点から、指名電話について、考察してみたいと思う。

もともとのルール「指名電話は取次がない」の成り立ちを確認してみた。
OPであれば誰でも、一定水準以上の応対ができることより(もちろん、できるように育成している)、お客様の電話に、 最初に応対した者が、そのまま最後まで応対を続けることが、理に適っているからであり、指名電話を許容することが、特に、 OPへの不公平に繋がるから、という理由のようであった。
理由の前半部分は、特に解説は不要であろうから、後半部分だけ少し補足で解説する。
仕事であるからには、OPの仕事振りは何かを基準に比較される。比較基準として、話術などの技量の他に、量的側面として、 受付コール数なども対象となる。
指名電話を許可すると、お客様からの電話を最初に受けたOPは、指名されたOPに電話を転送するだけで1コール受付たことになり、 実際の用件は、指名されたOPが行うため1コールあたりの所要時間が大きく異なることになる。加えて、指名電話の場合、 相手が常連さんであるが故に、電話が長い傾向にある。そのため、1コールあたりの所要時間が標準より長く掛かる。
また、指名電話の対象となるOPは、もともと応対が丁寧な傾向があるため、1コールあたりの所要時間が若干長い傾向にある。
という訳で、指名電話はOP間の不公平につながるのである。

さて、一方、コールセンターにとってCSとは何か、を考えてみよう。
コールセンターの顧客は誰、と、問われると、電話を掛けてくるお客様のなかで、特に、重要な方、ということであろう。
顧客が判った上で、では、顧客満足は、というと、コールセンターの顧客に気兼ねなく電話していただけること、 ということになろう。
そうすると、OPを指名できることで、一部のお客様(常連さん=顧客とは限らないため)に対し、 電話することを躊躇させることなく、電話受付ができることとなり、立派なCSと言えそうである。また、電話では、 顔を会わさないため、ちょっとしたやりとりのすれ違いで、お客様を立腹させてしまう。この観点からしても指名電話は、 お客様を立腹させる可能性を低下させれるので、良いことかもしれない。
コールセンターのCSという観点では、指名電話は良い事、という結論になるかもしれない。

では、会社にとってはどうか、という観点で考えてみよう。
つまり、会社の顧客の観点で、ということである。
通信販売などではないコールセンターの場合、顧客はあまり電話したいとは思わないわけで、電話を掛けるとすると、 どちらかといえば顧客にとって、嫌な事が発生した時に、仕方なく利用するものと考えられる。
顧客にとって、最後の砦、みたいなものだ。当然、在ってしかるべき存在だが、そんなに頻繁に利用したいものではない。
すると、コールセンターの常連さんとは、なおかつ、OP指名する常連さんとは、どういう事なのであろうか、 という疑問が湧き上る。
一つには、常連さんの存在は、会社がしっかりと説明できていないためと考えられる。操作説明書が判り難い、などだ。 この場合、会社は、常連さんを無くすために最大限の努力をするとともに、コールセンターで、しっかりサポートする必要が ある。
では、OP指名する常連さんはどうであろう。
当然のことだが、少し時間の掛かる苦情対応の場合、指名電話はあり得る。
しかし、この場合は、OPではなくSV宛になるので、OP指名電話ではない。
ではOP指名とは何か。そのOPでないと、話しが出来ないから?
では、なぜ、そのOPでなければ話しが出来ないのか、などと推測していくと、これだという理由が判らない。
考えて判らなければ、現場を知ればよい。
今のコールセンターは通話を録音しているので、簡単に調べることが出来る。
実際に聞いてみたところ、OPを指名する常連さんの多くは、会話をしたいだけ、と、おぼしき人達であった。実のところ、 電話の最初の部分では、○○の事が知りたい、とおっしゃるのだが、内容は世間話だったりすることが多い。これは、 指名したOPが休みだった場合、用件の回答を聞かずに、また電話する、という発言になるので、明らかである。
実は、この事は、録音された通話を聞くまでもなく、SV、OPから聞いて判っていたことだが、確認のために聞いた、 というのが実情である。
さて、そうすると、会社の顧客の観点からすると、どうすれば良いのであろうか。少しでも世の中の役に立つことだから、 CSRの一環として許容すべきか。
しかし、コールセンターの繁忙時でも、OP指名電話は掛かってくる。
本当に電話で話をすることが必要なお客様の邪魔(言い方は悪いのだが)になるのである。
そうすると、やはりOP指名電話は断らざるを得ない。
閑散時には認める手もあるが、今度は逆に、OP指名電話の常連さんから、前は(当然、閑散時の電話のこと)OP指名できたのに、 なぜ今回(繁忙時)はダメなのか、という話になり、やはり、繁忙時に電話が長くなり困ってしまう。
ある程度、対応を一定にしないと不要なトラブルを招くのである。

以上より、OP指名電話は取次がない、という、そもそものルールが会社にとってのCSの考えと合致することが確認できた。
この後、「ルールをしっかり守ろうね」と徹底することとなった。

では、OP指名電話は無くなったかというと、それでもOP指名電話は取次がれ続けたのである。
OPからすると、閑散時に常連さんから言われると、指名されたOPが出勤していると判っていれば、 電話を転送してしまうのである。
言うは易く行うは難し、である。