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相談窓口の現場にて
柄澤 明久



CS研のメンバーには窓口における消費者相談をされている方もおられると思います。
私も都内のある区で窓口相談をしています。但し消費者相談ではなく、商工相談です。
中小企業の社長に対する区の融資制度の利用相談や、起業家の創業などの相談にのっています。 つまり中小企業診断士としての仕事です。 しかし中には消費生活アドバイザーとしての対応がふさわしいケースもあります。 今回はそんな事例を紹介したいと思います。

それは印刷業の社長さんでした。
社長とはいえ自宅の1階に印刷機を置いて1人で仕事している個人事業主です。 いわば街の印刷屋さんです。
相談の内容は、「最近は印刷の注文がめっきり減ってしまった。 自分は70歳を超えているし、2人の子供も独立している。印刷業をやめていいかどうか悩んでいる。 収入は印刷の売上とわずかな年金だけである。」というものです。 たしかにパソコンの普及により、ちょっとした印刷物なら自分で出来ます。 印刷屋に注文することは少なくなっています。

これに対する私のアドバイスは「注文があり体と印刷機が動くうちは、 お客様のためにも仕事をしたほうがよい。いよいよ廃業となったら、 1階と子供部屋であった3階はリフォームして、貸し店舗と貸間にすればよい。 内装工事のための資金は区の融資制度を利用すれば、安い利息で借入れできる」 というありきたりなものでした。

問題は、いろいろ話しを聞いているうちにとんでもない事実を発見したことです。 この人はキャッシングローンを利用しているのですが、 限度額の300万円いっぱい借入れしているのです。毎月定額で5万円を返済していますが、 そのうち2万円が利息に当てられ、元金への返済金は3万円です。 そしてこの人は手許の資金が苦しいので、ある程度借入枠ができると、 限度額いっぱいまで数万円のお金をキャッシングしているのです。

これはのっぴきならない事態です。
このようなローンの使い方をしている限り、 この人は半永久的に毎月2万円の利息を払い続けなければなりません。
言い換えれば金融機関は、年金生活者から半永久的に毎月2万円づつ巻き上げていることになります。 この金融機関は別に悪徳業者でもなんでもなく、 誰でもその名を知っているナショナルバンクです。

確かにローンの使い方は利用者の責任で行われるものですし、 このローンの利息も安くないとはいえ、出資法の範囲内で合法的なものです。
しかし少ない収入の中から、毎月2万円ものお金が消費生活の役に立たずに消えているのです。

私のアドバイスは「たったひとつだけ守ってほしい。どんなに苦しくても、 キャッシングだけは絶対にしないで欲しい」という単純なものでした。
始めのうちは苦しいかもしれませんが、 元入れ金が増え残高が少なくなるにつれて毎月の利息も少なくなり、 事態は加速度的によくなっていくはずです。
「カードは引き出しか箪笥の奥にしまい、決してさわらないこと」
そうすればキャッシングの誘惑に耐えることができるでしょう。

最近はクレジットカードを利用した商品購入キャッシングなど、 巧妙な手口の詐欺行為が流行っています。今回のこの事例はもちろん詐欺ではないし、 一度に多額のお金を取られてしまうものではありません。 しかし正当なキャッシングローンでも使い方を誤ると、 じわじわと気が付かないうちに大きな損をしてしまうという例ではないかと思いました