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多摩川に親しんで
日野 春代



多摩川べりに住んで40年になる。

年齢とともに楽しみ方も変わり、多摩川の雰囲気も変わっていった。30年くらい前には、 休日営業の丸子の渡しや貸しボート屋さんがあり、懐かしい昭和の風情があった。 最近は孫たちとはバーベキュウを楽しんだりもしたが、一部の人たちの迷惑行為の影響?か、 残念なことに禁止になった。一番の思い出は、子どもが小さい頃の多摩川歩きである。 羽田の河口から歩けるところまで歩こうと2、3年かけて歩いた。 前回の終了地点まで電車で行き、歩き始め、 歩き終えたら近くの駅から帰るという弁当持ちの単純な娯楽であった。これは、 川岸が歩けなくなった青梅で終了となった。

今は週2、3回の速歩が楽しみである。休日ともなれば老若男女、学生さん、家族づれ、 グループがそれぞれ河川敷で、川岸で、土手で思い思いの愉しみ方をしている。 微笑ましい光景が繰り広げられている、そんな中、ちょっと気になる光景もある。 携帯を操作しながら子どもに相づち、遊ばせておいて携帯に夢中。 せっかく自然の中に遊びに来たのだから、メールを気にせず、情報に追いかけられず、 のんびり子どもと遊んでほしい、たまには「家に置き忘れて」リフレッシュしてほしいと、 携帯などなかった時代の子育て経験者は思うのである。

多摩川遊びは、いわゆる超の付く「安・近・短」の娯楽。 多摩川という自然が1人1人の要求に見事に応え満足を与えている。 遊びに来ている人たちはみんなリピーターかな?

都会暮らしでも、私は「ここ」というような場所は誰でも持っていると思う。 このような場所をみんなの共有財産として気軽に楽しく集える場所であり続けられるよう、 大切にしていきたいと思う。

「多摩川にさらす 手作りさらさらに
 何そこの児の ここだ愛しき」

と万葉集にある。
布をさらしていたほど清流だった多摩川も、一昔前は真っ白な泡が、川一面に舞っていた。 公害の象徴のような時もあった。今は、調布堰にも鮎が遡上し、 橋の上からは大きな鯉が泳いでいるのが見える。水質が改善されるのに40年はかかっただろうか?

そんな、多摩川べりを歩きながら福島の子たちがきれいな空気を思いっきり吸い、 地元の野菜や魚をお腹いっぱい食べることができるのは一体何年かかるのかと、ふと思うのである。