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山の茶屋
日野 春代



40年変わらず登っている山がある。
裏高尾にある景信山である。
年6,7回は登っているだろうか。
足腰を鍛えに、病後の体力試しに、花を愛で、季節の空気を吸いにもう何回登ったことだろう。

今は、ファミリー登山から夫とののんびり登山。お楽しみは727Mの頂上での憩いのひとときである。
富士山、奥多摩、道志、丹沢の山々が見える、東京ドームや新宿高層ビル、ランドマークまで、 いや江の島までも見える。
ビールで乾杯。
頑張ったご褒美のラーメンやおにぎり、食後のコーヒーはささやかだけれどとても美味しい。 ロケーションは最高、至福の時である。

その山頂には2件の茶屋がある。
どちらも眺めや雰囲気もよく、老夫婦はいつも変らぬ笑顔で迎えてくれ甲乙つけがたい。 最近は子や孫(だぶん)たちも応援に駆け付け家族ぐるみでお客様の応対をしている。
ビールや山菜てんぷらを頼むと手作りの漬物なども付いてくる。 毎回その時の気分で両方を利用させていただいていた。

しかし、いつの頃から一軒の茶屋に「売店利用者のお客様優先席」ができ、「コンロ禁止」 の張り紙が・・・。
椅子やテーブルの修理、周りの草刈りや道の整備など本当に大変だと思う。 気持ちよく過ごさせていただいているので、何かを注文するのは当然のマナーと思っている。 マナー違反の傍若無人の登山客が増えたり、事故でもあったのだろうか。
座れない「お客さま」が苦情を言ったのだろうか。
特にテーブルを使っていても咎められはしないようだが、 何となく足が遠のき一方の茶屋を利用させてもらっている。

こちらの茶屋は40年前とあまり変わらない様に見える。
おじさん夫婦には、草創期の茶屋の話、山野草の名前などいろいろ教わり、 程良いコミュニケーションができている。ゆっくり、気持ちよく休ませていただき、また、 来ようと思うのである。
まさに常連さん、CS言葉に置き換えればロイヤリティーということなのだろう。

看板一つで、他は何も変わらないのだが、こうも気持ちが変わるものなのかと思う。 下界での日常生活ではなお更のことである。何気ない一言で、ボタン一つで、店先の雰囲気一つで、 一回の電話対応で・・・、お客様の気持ちは変わり、離れていくのである。本当にCSは難しい、 人の感情のややこしさを考えさせられる。

山の茶屋に下界のCSを求める気は全くない。 むしろCS追及などされると環境破壊につながるだろうと思っている。
山には山の自然のままがCS。
これからも変わらず今のままのスタイルで登山客を迎えてほしいと願っている。

それにしても、最近の山は山ガールの皆さんのおかげでとてもカラフル。山が華めいている。 なでしこジャパンを先頭に元気のよい女子が目立つけれど、山おばさんは、男子もガンバレー、 強くなれーとエールを送るこの頃である。