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買い物の風景について
〜日本とカナダのスーパーマーケットから〜
田中 慶篤



日常私たちは、スーパーマーケット、或いはデパートや個人商店、コンビニなどで買い物をして、 レジに並びお金を払って、レジ袋なりマイバッグに商品を入れて持ち帰るという行為を 日々の生活の中で繰り返していることと思います。
これらの買い物の一連の風景は、日本もカナダもほぼ同じように見受けられますが、 私が昨年1年間(2010年1月〜12月)トロントのミッドタウンで生活する中で、 スーパーマーケットでの買い物について、 日本とカナダの微妙な違いを体験したことを書き留めたいと思います。

私たちがふつう買い物をした時、支払合計金額が1,000円或いは3,000円ぴったりということはあまりなく、 例えば1,024円とか2,988円とか端数が出る場合が多いと思います。それは日本もカナダも同じですが、 日本の場合は端数が1円でも足りないとレジを通過することができなくて、 ポケットやカバンに手を突っ込んで、小銭を必死で探している風景を見ることがありますが、 そんな時は必ずレジに長い列ができて、 夕方の忙しい時ですから当然イライラしたお客さんの顔も垣間見えます。
私がカナダのスーパーで買い物をした時のことですが、 レジの計算が終わり商品をレジ袋に詰め込んでもらった後で、端数を財布から出そうとしたら、 店員さんが「ノーサンキュー」と言って手で遮り、 自分のポケットからその端数を出してレジに入れていたことがしばしばありました。 そのスーパーは比較的大規模だったのですが、小規模なコンビニで買い物した時も、 端数が出たので小銭入れから1セント硬貨4枚を探し出そうとしていたら、 「これはあなたにプレゼントするよ」と言って、 やはりレジ係の店員さんがポケットから硬貨を出してレジに入れていました。
そのようなことが、公的な機関である郵便局でも、切手の購入や郵便小包をだす時にもありました。
しかし、郵便局では慢性的な赤字経営のために、逆に寄付を求められたことも時々ありました。

私は幾度かこのような体験をして、最初の頃はカナダって日本に比べて何と親切で、 フレンドリーで大らかなんだろうと思っていましたが、後になって次第に気付かされることがありました。 それは、カナダは日本以上にカード社会でキャッシュレス化が進んでいることによるものでした。
私もトロントで指圧施術を業とする仕事をしていましたので、スーパーの店員さんと同じように、 患者さんから料金を頂く時は、ほとんどがクレジットカードかデビッドカードによる処理でした。 現金は本当に少数派でしたが、カード処理に比べて現金の受け渡しは、 税金・チップ・おつりの計算がややこしくて、 端数は受取らずやはり自分のポケットから出す場合が時々ありました。
先にカナダは日本以上にカード社会で、キャッシュレス化が進んでいると書きましたが、 全ての人がカードを持てるわけではなく、ある程度の安定的な職業や収入がある人でなければ、 ビザ・カードやマスター・カードを持てないのです。 ましてや銀行系のキャッシュカードがなければデビッドカードも使うことができません。
ですから私がスーパーなどで買い物をして、 現金で支払う場合「この人はカードを持てない可哀そうなアジア人」と店員さんに映ったかも知れません。 そのようなことが幾度かあって、 私は銀行のキャッシュカードに付いているデビッドカードで支払いを済ませるようになりました。 実際にデビッドカードを使ってみると、計算の苦手な私にとって、買い物のあらゆる場面で、 快適さを実感することができたのはいうまでもありません。
端数を店員さんが自分のポケットから出して補填する目的は、店員さん自身のポケットマネーなのか、 またはレジを渋滞させないために、 会社の施策として店員さんに裁量を与えているのか良く分かりませんでしたが、 日本も参考にする価値があると思いました。
日本のスーパーやデパートなどでも専用のデビッドカードがあることが分かりましたが、 銀行のキャッシュカード(デビッドカード)で、 どこででも買い物できると良いのにと思う次第です。

次にレジ袋についてですが、私が良く買い物をしていたアパートの前のスーパーでは、 商品をレジに持っていくと、バッグ(レジ袋)を必要かどうか聞かれ、 必要と答えたら商品の量や種類に応じてレジ袋が取り出され、 1枚当たり5セント(約4円)がレジに加算されます。
一方、日本の自宅近くのスーパーではマイバックを持参した場合、合計額から2円引いてもらえます。 これは全ての日本のスーパーが標準的に運用しているわけではないと思いますが、 カナダのスーパーが足し算的にレジ袋代を加算するのに対し、 日本の自宅近くスーパーでは引き算的であるといえます。
どちらが良いかということは、議論が分かれるところでしょうが、 私自身はカナダのレジ袋1枚当たり5セント分を加算されるほうが、 環境問題以前にもったいないから次回はマイバッグを必ず持参しようという気持ちになりました。 逆に日本のスーパーの引き算式では、2円儲かったと思うかどうかは別として、 次回は必ずマイバッグを持参しなければという意識があまり湧いてきませんでした。

また、カナダのスーパーやデパートの場合は、 わりとセンスの良いデザインで布製のショッピングバッグや保冷バッグを1ドル前後(約90円) で売っています。
なぜ安いかというと店のロゴが入っており、このバッグが広く出回ることで、 宣伝効果にもなるからだと思います。それに、デジ袋に5セント払って、 持ち帰った後はゴミとして廃却するより、 1ドル払って長く使えるほうに価値を見出しているのかも知れません。
私の妻も日本への土産に幾つか買って帰り、それを貰った人はとても喜んで頂いたとのことでした。

以上、スーパーでの買い物という、どこにでも見られる日常の風景の一部分を切り取って、 日本とカナダの違いについて、自分の目で見て感じたことを述べてきたつもりです。
しかし、日本とカナダというタイトルはかなり大げさすぎて、深く掘り下げることもなく、 自分の身近にあった日本とカナダの断片を一方向から主観的に書き上げたに過ぎませんが、 このコラムから何かを感じ取って頂ければ幸いに思う次第です。