広川 友美

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私の職場では、レジは1時間交代でまわしています。
私が、レジに入った時、電話が鳴りました。
電話をとったのは、係長ではないけど、職場のリーダー的存在の男の子でした。
「申し訳ありません」なんだか、苦情の電話の様子です。その場に居た全員が聞き耳
を立てていました。
電話を切った後
「Hさん、やった。レジの打ち間違え」と注意を促していました。
その後、彼はみんなの連絡ノートに
「1月18日 レジ打ち間違え
S本様。¥680の商品代金余分にもらっているそうです。 レシートを確認の
上、返金処理・返金してください」
と書きました。(今回、トピックスの為、再度確認した内容です)
わたしは、その時レジにいたので、連絡ノートは見ていなかったのですが、レジの打
ち間違えのお客様が後に来られるだろうと思いながら、レジを打っていました。
15分も経っていない頃、40歳くらいのご婦人が
「電話したものだけど」返品のご様子だったので
「レシートを確認させていただけますか?」と訊ねました。
レシートは全部で18点のお買い物でした。
私は、打ち間違えと考えていたので、2度打ち(同じ商品を2回続けて打つ)か、手
打ち(バーコードが通らない時,管理番号と金額を手で打ち込む)によるミスだと
思っていたのですが、そのレシートは、全部バーコードで入力されているのです。
買った覚えの無い商品がレジ登録されていると言われるのですが、肝心の商品がない
のです。
「商品の確認はできますでしょうか」と訊ねると
「すぐに、開けてばらしちゃったからないわ。このkアロエカコウ¥680というのが
わからないし、買った覚えがないの」と言われるのです。
丁度、私が受け持っている管理番号(品番)だったので、Kというのがお子様の略、
アロエカコウとあり、お子様¥680といえば、ショーツの2枚組しかありえないと私
は考えました。
正しい私のとるべきマニュアルでいくと、レシートのみの商品なしの返品なので、係
長か店長をすぐに呼ぶ必要があったのです。
ただ、その時わたしは、自分の担当品番だったのでつい
「これは、子供のショーツですよ。このすぐ上に登録されているのは、同じアロエの
上着インナーですね。子供のショーツ2枚組を買われた覚えはないですか?」
と訊ねたのです。 すると途端に態度がかわって
「すぐに、返金できる、商品がなくても大丈夫ですっていうから、わざわざ戻ってき
たのに、なによ。私を疑うの」と怒り出してしまったのです。
私としては、突然耳まで真っ赤にして怒り出したお客様に対応の取りようが無く、ま
た、かなり動揺してしまって、すぐに内線で店長を呼びました。
「広川です。店長ですか?返品の件ですぐにレジまで来て頂けますか」
「お客様、少々お待ちいただけますでしょうか」
そして、店長の姿が見え始めた頃、「もういいわ。結構です。もう帰ります」
といって帰ってしまったのです。
そのあまりのお客様の怒りように店長も気になったらしく、私はその後、その場で起
きたことを説明しました。カード会員(お買い物をするとポイントが貯まる仕組みの
よくあるカードです)であることから、住所と電話番号を私に調べさせ、その間、電
話をとった彼と、レジを打ち間違えたとされるHさんにも事情を聞いたそうです。1
8点もお買い物をされるお客様が、1時間の内に何度も来られることなどなく、Hさ
んはよく覚えていて、確かに女児のショーツ2枚組は袋の中にいれたと、レジも打ち
ましたということでした。
その後、店長はお客様の所まで、¥680*1.05=¥714を持って、お詫びに
行ってしまいました。
その後のお話です。
どうやらお客様はショーツなど、どうでもよかったらしいのです。レジの際に、予想
外に待たされたこと、一度、打ち間違えをしていて、(そちらは、その場でHさんは
気がついて返金済み)その対応が気に入らなかったこと、カードを作るとポイントが
貯まってとてもお得ですよとすすめられてはいったのはよいけれど、カードをつくる
のにも、時間がかかったこと、そして、今回の返金もスムーズにいかなかったことな
どに、ずいぶん不満があったということです。
返金を申し出ると「でも商品もないのに・・・」と落ち着いてからは、受け取るのに
少々躊躇ったとのこと、「あの時の女の子に(私のことですね)、怒りすぎたわ、ご
めんなさいねと謝っておいて」と店長に伝言したそうです。
わたしとしてはなんだかすっきりしないのですが(たかだか\680でも伝票を計上し、
売価を¥0に訂正しなければなりません、2月に決算があり、¥1でも売価訂正幅は
なくしたい所です)、この話にはいくつかのポイントがあります。
佐藤教授の怒りを静める方法(http://members.aol.com/satowt/main.htm)から、い
かに私の対応が火に油を注ぎ、怒りを挑発してしまったか、突然耳まで真っ赤にして
怒り出した瞬間を説明しているのです。
まず、レシートを確認した時点で、私がお客様に共感できなくなっているのです。レ
シートが全部バーコード打ちをされていることと、商品が無いことから、私は、お客
様の言い分を認めていないのです。
共感できないうえに、さらに、商品を買っていないと言われるお客様に対して、買っ
ていない商品のバーコードが登録されるはずがないという事実について、水掛け論の
ような議論をふっかけ、レシートの見方や内容を説明・反論をしているのです。
このような対応が、お客様からみると私が、お客様の言い分を全く聞いていないかの
ように受け止められたのではないかと思うのです。また、バーコードと手打ちの違い
など怒りの最中に理解できるはずもなく、4桁の番号から商品の説明をするという行
為が、専門知識、用語のようにとられてのではと思います。
今回の例では、苦情というものが、その場で起きた問題限りではないこと、そのため
にも、お客様の話を良く聞くことが必要だということを教えてくれました。後日店長
から聞いたその後のお話は、怒りの原因が打ち間違えではなく、待たされたという事
実によることをしめしているように思います。
毎日いろいろなお客様が来られます。どうやって、待たされたという怒りの原因を聞
き出したのか、その場に居れなかったのが、残念なくらいです。事実を曲げないで、
と思ったら、とんでもなくながくなってしまいました。でも、この対応、どうするの
がよかったのか、もう一度同じ場面にであったら、どう対応するのか、とりあえず、
お客様のお話を良く聞いて、要約するところから始めないといけないようです。なん
て話をすると、店長に「とにかく、すぐに私を呼べ」といわれそうです。今度、店長
を呼んだら、待たされたという怒りの原因を聞き出す方法のヒントがなにかわかるか
もしれません。
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