TOPICS 121 BACK

『ハリー・ポッター』の魅力

高橋 輝子




 2002年12月5日、今年のヒット商品番付が発表になりました(三井住友銀行 グループのSMBCコンサルティングが実施)。最優秀賞に当たる東の横綱には、本 で1000万部以上、映画をはじめDVDソフトで初めて100万枚の大台を突破した 「『ハリー・ポッター』シリーズ」が選ばれました(西の横綱:W杯)。長引く不況 を背景に個人消費が盛り上がりを欠く中で、「夢」を与える商品が選ばれたようで す。

 日本はもとより世界中で1億6000万部以上の本が売れるという、出版史上例を見な い記録を打ち立てているハリー・ポッター・ブーム。みなさんも一度は本を目にした り、ご家族やご友人と映画を鑑賞するなど、その魅力に引き込まれている方も多いの ではないでしょうか。

 かくいう私もその一人でありますが、一番心奪われたのが『ハリー・ポッター』を 支える二人の女性です。一人は著者であるJ.K.ローリング女史。そしてもう一人 はその翻訳者である松岡佑子女史。

   もちろん、ストーリーはさることながら、本の活字を追っているだけでもお城や空 を飛ぶハリーが空想の世界へ広がっていくような、細部にわたる表現技法にも感銘を 受けました。

   しかし、なぜか私はその二人の女性を知った時に、ぐっと『ハリー』に引き寄せら れた気がします。

 ローリング女史は、シングルマザーで生活保護を受けながら、第1巻「ハリー・ ポッターと賢者の石」を書き上げました。スコットランド、エジンバラのコーヒー店 の片隅で、乳飲み子が寝ている間に、コーヒー一杯で一気に第1巻を書き上げたとい う話題の著者です。
 1997年イギリスのブルームズベリー社から出版された第1巻「ハリー・ポッ ターと賢者の石」はたちまち大ベストセラーに。7巻シリーズの最後の章はすでに書 き終えて金庫にしまわれ、毎年1冊づつが出版されます。富と名声を手にしたローリ ング女史。記者会見で彼女はこう答えています。  「私の本が、子供にビデオ・ゲームを忘れさせ、読書に夢中にさせていると聞かさ れるとき、私は一番幸せで、光栄に思う」と。  

 一方、松岡佑子女史は同時通訳者であり翻訳家でありながら(株)静山社の社長で もあります。1996年、社長であった夫を亡くし、傾きかけた会社を救ったのがこ の『ハリー・ポッター』だったわけです。
 イギリスで話題となっていた『ハリー・ポッター』を日本で出版したいという松岡 女史の熱い願い。もちろん他の日本の大手出版社も版権獲得にむけて行動をおこして いました。
 しかし、ローリング女史が最終的に契約をしたのは松岡女史の小さな出版社だった のです。
 「一度でいいから静山社の本をベストセラーにしたい」という夫の夢を叶えた松岡 女史。

   2つのドラマが『ハリー』の魅力をいっそう引き立てていると感じざるを得ないの です。

『ハリー・ポッター』公式WEBサイト→ http://harrypotter.jp.warnerbros.com/