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ヨセミテの山に登って思うこと

日野 春代





 今夏アメリカのヨセミテ国立公園にあるハーフドーム(2695m)に登った。初の海 外「遠征」である。とはいえ頂上まで後30分のところで時間切れとなり無念の涙を 飲んだのであるが。
 日米の山登りと環境を比較してみた。ハーフドームとヨセミテバレー(中心になる 観光地)との比較は涸沢・穂高と上高地がよい対象になると思った。どちらも国立公 園、ヨセミテバレーにはアワニ―ホテルはじめロッジやホテル、テント場、一方上高 地には帝国ホテルはじめ旅館、ホテル、テント場がありどちらも大勢の観光客が押し 寄せている。規模は違うが氷河が作った景観も少し似ていた。

1、 登山形態の違いによる環境は
 ハーフドームに行く登山道はよく整備され、登山曜日も決められていた。レン ジャーもしっかりしているようだ。元気であれば老若男女誰でも登れる。しかし山小 屋はなく下山まで12時間から15時間くらいかかる日帰り強行軍である。登山者は、小 さなデイパックの人がほとんどで、水のボトルだけを手に下げている人も何人か見 た。お楽しみは下山してホテルやロッジでどうぞと言うことらしい。登山者は山に一 日だけ登らせていただくのである。山旅を楽しみたければ自分の寝床と炊飯道具一式 を背負い、山腹でのテント泊まりである。ヨセミテにおいては、水とスナック程度の 軽装備ハイカーか重装備ハイカーどちらかであり徹底している。一方日本ではほとん どの登山者は相応の準備をして涸沢か穂高の山小屋泊まりである。
 山小屋における環境汚染が言われて久しい。生ビール、手作りのケーキ、豊富なメ ニュー。地上の快適なサービスを雲上でも要求する登山者、それに答えようとする経 営者。汚物による環境破壊も深刻である。今でも北アルプスの多くの山小屋は垂れ流 しあるいはシーズン後廃棄をしている。ハーフドームへの登山道のトイレは2ケ所ほ どあったがバイオテクノロジーを利用し匂わずそして非常に清潔だった。それが説明 されており、同時に環境教育もされていた。トイレットペーパーは必要なだけしか使 用できないように簡単な工夫が凝らされていて感心した。
 昨今、日本でも持ち帰りトイレの推奨、エコトイレの導入などを考えている山小屋 もあるようだが難問も山積しているらしい。山小屋の存在自体が環境に悪いと思うが それぞれの登山歴史があり、日本の山登りのスタイルを維持しつつも、将来を見据え た環境対策を登山者(消費者)、経営者、行政3者で考えなければいけない。待った なしのようである。環境を考えるとヨセミテのわりきり方の方が数段上である。
 今回のハーフドーム登山は自分の山登りスタイルを考え直す良いきっかけとなっ た。

2、環境への取り組みは
 ミヨセミテ公園に入るゲートで入園料として家族パス20ドルを払った。自動車の乗 り入れはシーズン以外規制していないようだが、バレー内を無料のシャトルバスが 走っている。ガイドブック等は豊富に用意されており、環境に対する呼びかけや取り 組みにも熱心である。日本の国立公園との成り立ちが違うためか、「木の葉一枚をも 含めたすべてが生態系の一部」という精神が生きていることが全体の雰囲気から感じ られた。上高地も自動車の総量規制や電気自動車、入山料の導入などを実現し、日本 に相応しい環境対策が進むことを期待したい。
 しかしバレー内は人がいる以上、上高地と同様やはり大量消費、大量廃棄は行われ ている。旅行者も遊ばせて頂いているという感覚を大切に消費活動をしたいものであ る。