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徹底するということ
広川 友美


   スーパーで働き始めて、4年目になる。新店ということもあり、パートさんの指導 ・育成に追われる毎日である。例えば、お買い物をした時、10人のうち、8人が笑 顔でいらっしゃいませといったところで、たまたま残りの2人にムスッとした顔で 黙ってレジを打たれたら、8人の笑顔は全く意味をもたなくなる。  そんな環境の中にあって、全員が同じ基準で動けるマニュアルをつくるということ の大変さと大切さを感じている。
 一例として、電話の応対がある。寝具のレジの近くで、呼び出し音が鳴った。周り には誰も居ない。電話に出る。ただ、それだけのことである。家に電話がかかってく る。「はい、**でございます」 で問題はない。しかし、寝具のレジにつながった 電話にAさんは
「はい」とだけ言う。これでは、電話をかけたほうは当然面食らってしまう。誰だか 解からない人に、重要な用事を頼むわけにはいかない。
Bさんは
「はい、婦人服担当の**です」と言う。これも、合格ではない。なぜなら、電話を かけた相手は、婦人服に電話をしたのではなく、寝具のレジに電話をかけたのであ る。電話をかけたほうは、間違えたかと思うかもしれない。
Cさんは
「はい、寝具レジです」としか言わない。場所が解かっても、Aさんと同じ理由でこ れも不可である。後で、問題が起きたときに、寝具レジにいた人に伝言しました、で は、全く意味が無い。
結局、
「はい、寝具レジの**です」
と言うことで統一しましょうという話になった。

決まったからには、「はい、寝具レジの**です」を全員が徹底しないといけない。 朝の朝礼で、この電話が鳴った時は、「はい、寝具レジの**です」と言いましょ う、と呼びかける。
ところが、昼から来た人は、「そんなの聞いてません」となる。
そのうち、昼から来た人は「はい、寝具レジです」でいいのに、なんで私は自分の名 前も名乗らなくてはならないのか、と言い出し、そのうち、朝から居る人も言わなく なる。
では、昼礼を設けて、そこでも、呼びかけたらいいのではないか、ということにな る。
しかし、朝礼、昼礼で言ったからと言って全員が出来るはずがない。

結局、受話器の裏に「はい、寝具レジの**です」と言いましょう、とテプラで作っ て貼ることになる。そして、朝礼と昼礼には、抜き打ちでチェックをするの一言も言 わなければならない。
そんなことを今日も繰り返し、もうすぐ、半年である。お客様とすれ違うときは「い らっしゃいませ」と言いましょうと店内に貼り付ける訳にもいかず、せめて、お買い 場とストックの間のドアに「スウィングドアを開けるときはいらっしゃいませと言い ましょう」とストック側出口に赤く大きく書くしかない、それだけでは、全く不十分 で,スウィングドアをあけるときは
1、前方を確認し、特に小さいお子様には注意する(透明窓をのぞいて窓の向こうの 足元をみる)
2、ゆっくりと手で押すこと(これを書かないと、台車に荷物を積んだまま、ドアに ぶつける人もいます)
3、そして、いらっしゃいませ、とここが、ストックではないことを確認しながら、 声に出すこと
と書かなくてはならないのです。

ドアをあけるという作業を、いかに全員がお客様にご迷惑をおかけしないように出来 るようにするか、こんなことも考えながら、半年を迎えようとしています。