TOPICS 109 BACK

受話器のムコウ
宮澤 洋子


  始業時刻とともに「トルッ、トルッ・・・」と鳴り始める電話。仕事柄、会社の 代表電話をとることがあります。着信数は月に約3,200件。ご用件を伺 い担当者へつなぐ交換業務です。常勤の専門オペレーターは2名おります が、オペレーター不在時、着信が混み合っているときなどは応援にはいり ます。「お電話ありがとうございます。○○でございます。」と名乗り、先方 のご用件をお伺いしてから担当者へ代ります。お客さまと社内の人間の間 にある電話交換について考えてみました。

相手の顔は見えませんので、いかに正確に内容を聞き取るか、間違いの ない言葉で伝えるか、お待たせしないで担当者へ用件を渡すことに神経を 集中させます。もちろん、全体を通じすべてが会社の印象となるわけです から明るく感じの良い対応を心がけています。
しかし、実際は受話器のムコウの社内担当者へ予想以上に気を使うことも しばしばあり、社内担当者にも好感を持ってもらえるような電話交換であり たいと思うようになりました。気がつかないうちに私は「担当者へつなぐまで」、 また社内担当者は「交換手から代わってから」が自分の仕事の領域だと思っ てしまうのでしょうか。(お客さまにとっては一連の電話やりとりがすべて同じ 会社の人間であるにもかかわらず。)電話というのは、突然に現在進行形の ところへ割ってはいってきます。(担当者は自分の仕事の手をいったん止め ることになる。)私側の「早くこの電話をつなぎたい。」という気持ちが先に立 ち、「○○課」につなぎたいというばかりで実際に話す担当者個人をあまり意 識していませんでした。無愛想に代わる人「それは隣の席の人の仕事なんだ けど。」と重い腰をあげるように代わる人、「さっきから電話ばっかり」という感 じの声になってしまっている人、様々な担当者の顔を知らないことに気がつき ました。

なにか足りないことはと思い「いつもおつかれさま。」「忙しいところすみませ ん。」
などのクッション言葉を使い社内担当者の繁忙感を和らげたり、廊下で対面す るときに声をかけてみたり、何かと仕事の情報を聞き取ったりするうちに社内 担当者の顔が受話器のムコウに浮かぶような思いになりました。受話器を置 くときに、「よろしくお願いします。」という気持ちを込めてつなぐこともできるよ うになりました。

これからはリレー競争のバトンのように、相手が取りやすいバトンの渡し方を意 識してみたいと思います。それがひいては、お客さまにも満足される対応ができ ることにつながれば願ってもないことです。1ヶ月に3000人の方とお話しできる ことは電話ならでは。お客さまと社内担当者と受話器のムコウを意識しながら小 さな事から続けてみたいと思います。