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ワケあり商品ブームのワケ
近藤 知子



ワケあり商品がブームになっている。
形や色が不揃いな野菜、かすかに織ムラがある衣類から、包装箱の一部がへこんだ商品まで、 品質そのものは変わらないのでたいへんお買い得とあって、消費者の人気を呼んでいる。 私もそんな消費者のひとりとして、ワケあり商品ブームのワケをちょっと考えてみたい。

消費者にとってワケあり商品のメリットは何よりも、この不景気で収入は増えず、 家計のためには節約しなければならない、かといって買う物の質はあまり下げたくない、 という思いに応えていることだろう。

また、値引きの理由が示されているので安心だ。たいていの場合、 値引き額は消費者からみた商品自体の評価の差よりずっと大きいので、買い得感がある。

そして、環境問題がグローバルな課題となっている現在、「捨てるなんてもったいない」 という環境志向にマッチしている。食品の品質と鮮度が不充分という理由で、 食べられるのに廃棄される食品ロスが年間500〜900万トン・・・などと考えると、 ワケあり商品を買うことで多少は救われる気分になる。

生産者や企業にとってもメリットがある。従来、安値で買い叩かれるか廃棄の運命にあった商品が、 ワケを示すことで売り上げに貢献できる。

また、お客様にワケありの理由を理解していただければ、ワケなし商品の価値にはほとんど影響しないし、 ワケあり商品の購入がワケなし商品を購入のきっかけになることも期待できる。

一時期、商品の偽装や安全性が問題になって以来、生産者や販売者、 商品全体に対する消費者の疑念は未だ完全に払拭されたとはいえない。そんな中で、 販売者に有利とはいえないワケありの理由を開示することは、逆にお客様の信頼を得ることにもつながる。

そこでもう少し長い目で考えていくと、このワケあり商品、 販売と消費のあり方の変遷とも関わりがありそうだ。

かつて販売者と消費者の一対一での売買が主流だった頃、 両者で商品への要望と商品情報について対話する余地があった。日本の経済が発展していくにつれて、 大量生産・大量消費・対面販売の減少の時代に入ると、 売買の現場での商品購入プロセスが著しく省略されて、 個々のお客様の顔も商品情報もお互いに見えない部分が多くなった。

生産者・販売者としては、大量生産のメリットを生かしながら、 様々なタイプの消費者にあまねく満足してもらえる商品を提供するため、商品の規格が厳密になっていった。 製造工程や輸送中に発生してしまう不良品、規格外品は廃棄され、それでも大量生産・ 大量消費のサイクルが行き詰まることはなかった。

しかしこの流れは変わりつつある。少子高齢化による人口の減少、 景気の後退や年金の見直しによる生活費の減少、地球上での限られた資源の減少。 これらの要素の減少によって、消費生活は大量生産・大量消費・大量廃棄からの転換を迫られている。

そこで、生産者・販売者は商品の廃棄基準を見直しはじめたのではないか。
どこまで厳密な規格が必要?規格はだれが決める?そもそもワケなし、百点満点の商品とは? これらを問うていくと、消費者の百点満点志向に生産者・販売者が逐一応えようとして、 細かい点でハードルを次々と上げていき、これに見合わない商品を廃棄していたことを見直し、 何らかの形で活かす方策を考えた。

消費者の方も、品質に対する厳しい目は変わっていないが、常に百点満点の商品を求めるよりは、品質、 コスト、用途などのバランスを考えて、現実的な選択をするようになった。

そこで、顧客の実際の満足度と生産者・ 販売者が追求する顧客満足の隙間にぴたりとはまったのがワケあり商品だったのではないか、と思う。

一方で、ワケあり商品ブームが過熱することへの懸念も否めない。
これまでの廃棄コストはどうなるのだろう、その分ワケなし商品の価格を下げてほしい、 と思うのが消費者としての偽らざる気持ちであるが、生産者・販売者にとっては、 商品の価格全体が低値にシフトするリスクを抱えている。

また、特に加工品などで大々的に「ワケあり商品」と訴求しているのを見ると、 かえって品質管理の水準そのものを疑い、ワケあり商品が売れることによって、 商品の品質を高めるための努力が削がれてしまわないか、と気になってくる。

長い目で見ると、ワケあり商品は「ワケあり」という冠を外しても定着していくと思う。 ワケあり商品ブームのワケを考えることは、消費者にとっても生産者・販売者にとっても、 商品の価値基準と商品に対する満足度を見直すよい機会ではないかと思う。