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レジさんの一言から

日野 春代



仕事の帰りに、時々駅ビルの食品スーパーに立ち寄る。

夕方はいつも、アルバイトらしき高校生や、パートの主婦がレジに立っている。皆さん、仕事は丁寧で早く、 挨拶もお辞儀もキチンとできている。足りないものを慌てて買って、家路を急ぐ、そういう日常風景の流れの中で、 アレッと一瞬流れが止まったことがあった。

ハウスカードで買うと「いつもお買い上げありがとうございます」思わずレジさんの顔を見た。次の機会には、 レジ袋はいらないと言ったら「エコ協力ありがとうございます」と言われた。60歳前後の方と思われる。 マニュアルにあるのかもしれないが、短い時間で、さりげなくアレッと思わせる言葉が出てくるのは、 自分の言葉になっているからだろう。今日はどんな言葉をかけてくれるだろうと期待したり、 しばらく見ないと辞めてしまったのではないだろうかと、お客の私が心配する。向こうの方で、 「お待たせしましたー」という元気な声が聞こえ安心する。「頑張って」と心の中でエールを送っている。

昨年は「アラフォー」が流行語大賞に選ばれた。今年は還暦前後の世代が「アラカン=アラウンド還暦」 と呼ばれ何かと注目されている。五反田のファーストフード店では60歳以上の人たちが大勢働いていて、 アットホームな雰囲気が評判で、常連客も多いとのこと。人生経験が豊かな分、気配りができ、 「今日はお天気でよかったですねー」など、さりげない、気持のよいサービスができているらしい。 マニュアル化されていない心配りのおもてなしが好評のようだ。一緒に働いている若い人たちにも良い勉強になり、 効果を挙げているとのことである。教えることの難しい心配り、気配りの無形のOJTなのかもしれない。

アラカンの人たちが、あちこちでせちがらい世の中に、うるおいや刺激を投げかけてくれている。こんな体験をしたり、 話を聞くと、アラカン世代の私は嬉しくなってくる。


今、*音楽家、秦万里子さんの「レジ待ちの列」という歌が、主婦たちに大いに受けている。見事にレジを待つ心の風景を、 言い表している。何度聞いても「その通り」と笑ってしまうが、あとは物悲しい。気配りの「ありがとう」の一言が言える、 件の方たちのような余裕のある、お客にならなければと思う。

*ユーチューブで聞くこができるかもしれません。
未だないようです。他の曲ならあるようですが・・・