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「プロ」って

日野 春代



土曜日の夕方の事である。ジョギング、サイクリングと行きかう人も多い多摩川の土手で、子連れの若いお母さんが、 怒鳴り合っている。1人はよちよち歩きの子供を連れたお母さん。一方は幼稚園くらいの子供を自転車に乗せたお母さん。 あまり目にしない光景なので、つい聞き耳を立ててしまった。喧嘩の内容は、「危ないから手をつながないと、だめヨ。」 「気をつけてますよー」。互いに譲らない。10メートルくらい離れても、まだ、言い合っている。 最後に自転車のお母さんが「子育てのプロが言ってるンだから、聞きなさいヨー」と言って、土手から下りて行った。

「子育てのプロ」?はて、どういう人が「子育てのプロ」なのだろうかと、考えてしまった。 私も3人の子供を何とか独立させた。子育ての経験者とは言えるけれど、「プロ」ではないなー。 自転車のお母さんは、何を持って、自ら「プロ」と言ったのだろう。「あなたよりは子育ての先輩?」「幼稚園の先生?」 「子育てアドバイザイー?」等など、想像してしまった。そういえば2、3年前に「プロ中のプロとして恥ずかしい」 と言っていた、投資コンサルタントは逮捕されたなー。など「プロ」という言葉が頭を駆け巡った。

職場でも「プロとして恥ずかしくない仕事を」「プロとしてのサービスを」「プロ意識を持って仕事を」などと、よく使われる。 どんな仕事でも、また、どのような立場の人であれ、誇り高く、目的意識を持ち、精進している人、そして、 人とどこかで「良いつながり」が持てる人たちが、「プロ」と言われる人なのだと、思う。 そのような人は、決して自ら「自分はプロ」と名乗りはしないだろう。

自転車のお母さんの「プロ」宣言。その気負った「プロ意識」が、「注意」という言動に出てしまい、 若いお母さんが反発したのではないだろうか。CSでいう、「相手の立場に立った」対応、 この場合は初めての子育てに不安を覚えている、「若いお母さんの立場に立った」優しい「言葉掛け」ではなかったのだろうか。 コミュニケーションが途絶えてしまっては、到底「プロ」とは言えない。彼女は「プロ」失格である。

私は20数年間、専業主婦をしていた。専業主婦は何の「プロ」なんだろうか。「専業主婦という名のプロ」なのかと、 自問自答を繰り返している。