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ポイントカードの終り方

柄澤 明久



最近、最寄のJR駅前にある量販店が店じまいしました。この店ではポイントカードを発行していて、私も持っていました。 週末にビールを買うくらいであまり使用していない私のポイントは2年間で450ポイントくらいでした。 この店では500ポイントたまると買い物のときに現金として使用できます。

もうカードも使うことがないし、最後なので買い物のときにその分差し引いてくれるかな、と店員に聞いてみると、 カードはチェーンの他の店で使えるが、使わないで廃止にするなら、粗品と交換するという。他の店といっても近くにないし、 この際ポイントは買い物には使えず放棄するしかないのです。粗品とはちっぽけな小鉢です。

450ポイント貯めたということは9万円以上の買い物をしたということです。それが無に帰すということに、 いささか憮然としていると、近くにいた中年男性が「ポイントは現金と同じ価値があるのだから、現金と交換しろ!」 とすごい剣幕で店員に怒鳴っていました。この人もある程度のポイントがたまっていたのでしょう。

私もこれには同感でした。頭の中では、職業上のクセで「この店では、負債として計上していたポイント引当金を、 決算時に引当金戻入処理をするのだなあ(その分キャッシュフローが増加する)」とつまらないことを考えながら、 腹の中では「ニャロメ、やらずぶったくりの商売しているから、左前になるんだ」と悪態をついていました。

この店では「換金は500円単位であることは了解済みであり、カードは他の店でも使用できるのだから、やましいことはない、 粗品はご愛顧に対する感謝のしるし、これで満足して頂けるはず」という主張だと思います。それはその通りだと思います。 しかし顧客の気持ちとしてはどうでしょうか。顧客満足の定義を思いだして欲しい、「顧客を満足させること」 ではなく「顧客が満足すること」でした。
残ったポイントを粗品と交換することに満足している人は、残ポイントがせいぜい数十ポイントまでの人だけではないでしょうか。 多くの人は納得がいかなかったと思います。

ポイントカードの導入は顧客への利益還流だけでなく、顧客との良好な関係作りに意義があります。
買い物のときレジでポイントカードを提示する→店員がカードをリーダーにかける→精算をする→ポイントがたまる。 この一連のプロセスを通して店と顧客との間に一種の関係性が形成されています。 それは1ポイント1円という非常にささやかではあるのですが、ポイントの共有という関係性です。
店はこの関係性を、顧客との信頼関係を強化するために様々なかたちで活用することができたはずです。

今回のポイントカードの終わり方における顧客の不満は、ポイントを換金できなかったこともさることながら、 店と自分との関係性を一方的なかたちで破棄されてしまったことにもあるのではないでしょうか。
結局この店ではポイントカードの導入の目的は顧客との良好な関係作りではなく、 単に売上拡大のための販売促進が目的だったのか、と少し残念に思いました。
有終の美、終わりよければ全てよし、という言葉がありますが、実践するのは結構むつかしいものですね。