森 秀男

高齢者や障がい者への装いの支援が出来る人材を育てようと、京都市の京都女子大学は、今年度「ファッション・セラピー」
の講座を新設した。
ファッション・セラピーとは「装いによる心理療法」であり、心理学や生活福祉学なども学ぶ。
家政学部の泉 加代子教授を中心に、「ファッション・セラピスト」の資格を設ける協会も設立準備中である。
同教授の研究室は、02年から、特養ホームや老人保険施設の入居者たちにファッション・セラピーを試みて来た。
先生の指導の元に、学生らが半年から1年間、月に1回程度訪問し、スタリストとして一人づつ担当しながら、
服装への関心を掘り起こし、似合う服の助言や手持ちの服を生かしたコーディネートの提案をする。
日常生活の変化を調べるために、初回と最終回に認知症の状態を見る尺度評価と生活能力評価を依頼した。
その結果は、鏡や写真で自分の顔が認識できたという人で、最終回まで実施できた女性20人の内、
14人は認知症の尺度で軽症から境界になるなど改善が見られた。
また、11人は生活能力で改善が認められたという。特に効果が目立ったのは、さまざまな家事のこなし、衣服の着脱、
清潔さに関する意識、意思伝達であった。
泉先生は「高齢者は、格好を意識し始めると自意識を取り戻し、自立への意欲につながる。衣服は人間の尊厳に関わると、
どうか再認識して欲しい」と語る。
*朝日新聞 朝刊 生活欄(2008年5月30日)より引用し再編集しました
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