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小さな和菓子屋さんからCSを考える

日野 春代


   


我が家の近くに洋菓子屋と和菓子屋がある。どちらも7、8年前にでき、50メートルほども離れていない。町の中心から、 はずれた幹線道路沿いであるにもかかわらず、どちらも有名で繁盛している。洋菓子屋さんは名のある場所に期間出店、 和菓子屋さんはTVで芸能人がお気に入りのお菓子として紹介した。 店先の設えは洋菓子屋さんはガラス張りで華やかななデコレーション、片や和菓子さんはツワブキやすすきの植栽に暖簾と引き戸、 うっかりすると見過ごしてしまうような店先である。どちらもなるほどと、思わせる店構えである。

しかし、この両店には大きな違いがある。

洋菓子屋さんは拡大路線。支店を出した。お菓子教室を開いた。駐車場ができた。間もなく喫茶部がオープンする。 お菓子の種類はケーキから生チョコまで豊富。未来のパティシエたちが大勢働いている。味も対応もよく、 盛況振りから見てもCS度は大である。

和菓子屋さんは、原状維持こだわり路線のように見える。間口は狭く、売り場は畳2、3枚ほど、3人も入ると一杯になる。 商品は見る限りでは3種類ほど。ご夫婦2人で経営されているようだ。この和菓子屋、 一般にいわれているCSの尺度とはちょっと違う。まず、小さな植え込みには「犬のフン尿お断り。マナー守れ」。 引き戸の足元には「ベビーカーでの入店お断り」、今は「コントロールの効かないお子様の入店はご遠慮ください」。 戸口には「豆大福は売り切れました。当店はきんつばのお店です」。と木製の板に立派な墨字の看板がそこここに。 店先には何となく刺々しい雰囲気が漂っているのである。あまのじゃくの私などいくら評判でも、「買ってやるものか」 などと思っていた。

コラムを書くにあたり、偵察がてら、評判の豆大福を主婦の集り用に買った。味にうるさい主婦達の評価は評判どおりであった。 店内の雰囲気は田舎の和菓子屋さんに来たような感じでいたってシンプル。奥さんと話したところ、看板のイメージとは違い、 とても物静かで感じの良い人であった。

「白い恋人」から「赤福」「船場吉兆」に続く一連の騒動は、1960年に発生したニセ牛缶事件の頃に逆戻りしたようである。 CS以前の問題である。食べ物会社のCSの核である「安全・安心」を忘れてしまったのだろうか。

この和菓子屋さんのスタイルは、作り手が管理できる産地やルート、賞味期限内に売り切れる商品の量と種類、 作り手の顔が消費者に見えるのである。これが食べ物を扱うお店の本来の姿である事に気付かされた。そうなると、 玄関先の看板も、マナーを守らない人たちが増えてきている世の中で、毅然と仕事を通じて啓発をしてくれている行為と写る。 行動に移せないわが身を振り返り立派だと思う。

最近、洋菓子屋さんの味が落ちたような気がする。一連の報道の影響で、気がするだけかもしれないが、 どちらもがんばって欲しい。