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宿選び

日野 春代



5月の連休直前に5泊の九州旅行をした。目的は山登りと温泉である。天候に恵まれ由布岳と久住山縦走、 そしてたくさんの温泉に入る事ができた。
5泊ともそれぞれ違う趣の普通クラスの旅館である。家族の顔が見える旅館、海辺の魚料理自慢の民宿風旅館、 秘湯ムード溢れる一軒宿、お風呂自慢の宿、国民宿舎、どこも、コスト以上に満足のいくものだった。
しかし、なぜか、最後に泊った国東半島の国民宿舎が一番ホッとのんびりした気分になったのである。お湯は循環、 24時間入浴不可、日帰り入浴客の時間は制限なし、食事は一般利用者と一緒のレストランである。 それでもとても居心地がよかった。
なぜ居心地がよかったのだろうか。
1、公共だという安心感
2、料金、サービスは誰に対しても均一という公平感
3、従業員は公務員という距離感
4、気配り、サービスの気負いなし
5、泊っている人も公共の宿を選んでいるという連帯感?
など、すべてが「ほどほど」なのではと考えた。民間の旅館は一生懸命サービスをしてくれる、 一生懸命お料理を作ってくれる、施設、部屋、アメニティーにも気を配っている。顔が見えすぎ少し疲れたのかも知れない。 このようなサービスを受けた後に泊ったことも影響しているのかもしれないが、 この公共の宿の「ほどほど感」のサービスがとても居心地のよいもにしてくれたと思った。
06年版の「情報通信白書」によれば買い物の際、インターネットで品定めや、値段を較べたりしている消費者が62%に上り、 26.1%が購入もしているそうだ。「旅行」も購入割合が高い一つであるそうだ。 私も宿選びはネットの口コミ情報を参考にしている一人である。この情報は、玉石混交であるが、 選んだ旅館には期待感も膨らみ過ぎる。また、半面疑似体験を既にしてしまっているのか、 その場での「感動」があまり感じられないのも事実である。旅館側も書き込みには神経を使っていることだろう。 お客様の声は宝である。「ネットの声」を多いに活用し、サービスの改善や商品の提供につなげていけばよい思う。しかし、 「声」に振り回されないで、本当にお客様が癒される居心地のよいサービスとは何かを見失いで欲しいと思う。
今回の旅行で「ほどほど感のサービス」をあらためて見直し、ネットの口コミ情報は「ほどほど参考」程度がよいと思った。