日野 春代

修理して使うという生活から少し遠ざかっていたように思う。
電気製品など身の回りのものは修理するより買った方が安い、部品もなく修理などは出来ないものと何となく思い込んでいた。
今回、家具を修理して「思い込み」を反省すると同時にCSを実感するいい経験をした。
20数年前に、食卓セツトを購入した。テーブルは5人家族がゆったり座れるよう、幅1M、長さ2Mのものを買い求めた。
家庭の中心になるのものだから少々奮発した。
食事をしたり、本を読んだり、主婦の勉強机と、色々な役割をしてくれ、我が家の歴史とともに親しんだ食卓である。
一家の主の椅子は肘掛のついたものにした。その肘掛部分が、ひどくぶつけた拍子に少しぐらつくようになった。
数年そのまま使っていたがぐらつきが大きくなり、大事に至る前に修理をする事にした。
テーブルの裏側に会社名をはじめ型式などの情報がキチンと記されている。この電話番号で通じるだろうかと心配しつつかけると、
当然のように落ち着いた声で女性社員が応対してくれた。この20数年の間にバブルあり、バブルの崩壊あり、
デフレありと産業界も大きく変わったのに、よくぞ掛かかかってくれた、とそれだけで感激した。
この型式は今は製造していないが修理は出来るとのこと。「高いだろうなー」と思っていると「多分5000円くらいだろうが、
東京支社で現物を見てから正確な料金は知らせる。それから決めてください」とのこと。
東京支社が契約している運送会社が引き取りに来た。やはり「5000円」で修理が出来ると電話があり、お願いすることにした。
飛騨高山の本社工場に送られ2週間後、大きなダンボールの中にクッションビニールに大事に包まれ帰ってきた。
送料などすべて込みで5000円であった。
20数年後にも責任をもって低料金でアフターフォローしてくれる。満足以上の感動である。
ホームページで会社と企業理念に興味を持ち調べてみた。創業は大正9年。
「気持ちのよい家具を原点に、品質はもちろん、デザインでもお客様に感動を与える本物を」と書いてある。
20数年たっても使い勝手がよく、頑丈で飽きない、家に馴染んでくれている。アフターフォローも万全である。
企業理念そのまま、偽りなしである。それぞれの仕事の役割を的確にこなされている社員の様子から、
自社の製品に愛着と誇りを持っておられる事が見て取れた。本当に100年近くも社員一丸となり地道に真摯に、
ものづくりに取り組んでこられたのだナーと思った。
多くの企業の「理念、方針、行動指針」にはCSやCSRの文言が入っている。それがCSの柱になっていると思うが、
相次ぐ企業不祥事を見るにつけ、お題目だけのCSであったのかと思い知らされる事が多い昨今である。
今回の経験はCSの本来あるべき姿勢を教えてくれた。
そして、消費者として本物の企業や商品・サービスを見分ける自分の目を養わねばと思った次第である。
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