羽利 泉

私は、コンビニエンスストアをほぼ毎日利用している。朝食を
食べることができない日は、コンビニに寄って席朝族の一員となり、
仕事で帰宅が遅くなると、コンビニエンスストアで夕食を
調達することも多い。残業続きの日は閉店間際に、スーパーで
お惣菜をGet!このような生活がいいのかどうかは抜きにして、
短い接点だが、時間に追われながらも、レジの店員さんとの
コミュニケーションににんまりしてしまうことも多い。
レジでの精算を待つある日、かなりの買い物客が無言のまま
レジを通過していくことに気づいた。黙って買い物かごを差し出し、
黙ってお金を支払い、去っていく。しかし、店員さんはみな、
どのお客様にも平等で、明るく、元気な応対だ。幼い頃、母と
一緒に買い物に行くと、母は決まって「お願いします」といって
かごを差し出し、「ありがとう」と言ってレジを背にした。無意識の
うちに親の態度をコピーしてきた、私は「いらっしゃいませ、
こんばんは」というお決まりの挨拶に、「こんばんは」と必ず答える。
特に、コンビニではびっくりされるが、多くの場合、親切に気持ち
よく対応してもらえる。おつりをもらうときには「どうも」「すみません」
とか特別意味がある訳ではない言葉を交わす。
「ありがとうございました、またおこしくださいませ」には閉店間際には
「お疲れさま」のバリエーションで応える。さすがに「お疲れさま」には
面食らう店員さんもいるが、残業で遅くなる日は、どうしても閉店間際
の店員さんに親近感を覚えてしまうのだ。
よく利用する、近所の食品スーパーは高校生と思しきアルバイトが
大半だ。放課後の部活のようなノリの店内だが、非常にすがすがしく、
最寄り駅の反対側の大手チェーンスーパーよりも数段気に入っている。
ひと通りの接客用語は当たり前のように使えており、ありがたいことは
ありがたく、申し訳ないことは申し訳なく、表情と声のトーンが一致して
いて感じがよい。それに何よりも元気がいい。加えて、レジで何か
イレギュラーが発生した時、先輩のアルバイト店員が念のため
フォローに来ることもあるが、レジ担当者の判断が、非常に早いことにも
感心する(君たちは本当に高校生なのか?)。そして、店内にも、
買い物客にも目が行き届いているので、何か質問しても直ぐに
答えが返ってくる。買い物客から話しかけられたら、しっかりと受け止め、
自分の言葉で素直に返す。(正直、私の働くコールセンターに来て
ほしいくらいだ・・・。)良く見かけるのが、それこそ部活の時のように、
先輩が後輩に教えている光景だ。OJTだ。アルバイト同志も仲が
よくとても楽しそうに仕事をする。管理者の社員らしき人も、よくアルバイトと
話をしていて笑顔がある。当たり前のことなのかもしれないが、
職場としてはかなり健全だという印象を持つ。彼らは将来どんな仕事を
選ぶんだろう、なんてことも想像してしまう。
日々の暮らしの中で、物言わぬ人とわかっていて、私たちはその人に
話しかけることはあるだろうか?消費者と企業の接客要員のコミュニケーション
とて、特に不満がある訳でないのに消費者がストロークを返さない
コミュニケーションは多少の違和感を感じる。人と人との交流には
役割や立場に関係なく、どんな時も敬意をもっていたいものだ。
「こんにちは」と言われれば「こんにちは」と言える、「ありがとう」と
言われれば「こちらこそありがとうございます」「いいえ、どういたしまして」
と言える、そんな当たり前の感覚はいつまでも忘れずにもち続けたいと思う。
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