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企業は、なぜ顧客を裏切るのか

手島 伸夫



 世の中では、「顧客本位」や「顧客満足」とスローガン(=企業理念ではないと思う)を掲げながら、どうして顧客を裏切る企業が後を絶たないのであろうか。

「古い牛乳を混ぜた会社」「ブレーキが利かなくても知らん顔の会社」「原子力という事故が起きたら数万人が被害を受けるのにひび割れたパイプを放置する会社」「食肉をごまかす会社」などは、発覚したほんの一部ではないのだろうか。

   悲しいことにインターネット関係で、私はそんな経験を重ねています。問題は、どうしてそんな「顧客を馬鹿にする対応」が生まれてくるか、その根本原因を排除しないと、今後もまだまだ起きるということである。

 私の家は、「経営の神様と一部で言われている(?)」N社の製品が大半である。これは、経営の神様の「経営理念」に感動したからではなく、近所のN社販売店の奥さんの人柄と笑顔が素敵で対応が良く、妻と「電気製品を買うならここだね!」と感動しているからである。

 さて、インターネットのプロバイダーも、この会社であった。Y会社が、数年前からADSLを大々的に宣伝した時も乗り替えずにN社を利用し続けた。かなり以前になるが、ある日N社が新聞の全面を使った広告を出した。「N社もIP電話を始めます」とのことである。

 早速、私はN社に電話をした。そこからがおかしかった。電話の相手は、お宅様は「○○バージョンの電話であることは、ご存知ですよね!」と変な言い方をする。もちろん、ごく一般の消費者であり、ADSLの専門家でない私は、そんな細かいことは知らない。よくよく聞くと、初期のころの申込者は、IP電話には、できないという。そこで「IP電話にできないバージョンであるということを、貴社は最初に説明したの?」と聞くと、「いいえ、そのころはIP電話は無かったですから、説明をしていません」というではないか。

 結局、私の想像では新聞の全面広告を出したら、電話が殺到したのに、IP電話にできない契約が多すぎて、いちいち説明をしていられなくなったのではないか。それにしても、まず全面広告の新聞にそのことをきちっと表示するべきなのに、本社で広告を出した連中は、顧客を馬鹿にした対応である。

 私は、この対応に怒りADSLをY社に替えるべく手続きを始めた。そのときにメールアドレスは、そのままにしてADSLだけ、他社に変えるから解除して欲しいと頼むと、分かりましたという。ところが、すぐこのメールアドレスが不通になった。おかしいと思って連絡を取ると、先方が間違えて手続きを進めてメールアドレスを廃止してしまったのである。

 先方の間違えだから、当然、メールアドレスを復活するものと思っていたら、答えは「それはできません!」の一点張りなのである。これには驚いた。自社の説明間違えで、顧客に被害を与えても、回復できないと平然として言うのである。しかも、機械的にできないとウソの説明までするから驚いた。私は、本当にこの対応に怒ったが役所を相手にしているような相手に時間の無駄であることを悟り、所詮この程度の「経営の神様(?)」の会社を相手にしていてはラチがあかないので、Y社のIP電話に乗り換えたのであった。

 普通は、ここで「目出たし、目出たし」となるはずである。ところが、しばらくすると、今度はY社で事件が起きた。パソコンが増えたので、無線ランを利用するべく申し込んで、機器を受け取ってセットした。それが私のデルのパソコンと相性が悪く、警告メッセージが出て、無線ランばかりでなく、従来つながっている有線のインターネットにも繋がらない。

 Y社のサポート担当者は、初めから逃げ腰であったが、「お客様今回のご提供の機器は無償ですから、(故障には)責任は負えません」と本当に信じられないことを言うのである。私は、ここでも本当に腹を立てたが、しかし企業のこうした対応には慣れている。結局、知り合いのパソコンに詳しい人に数万円で診てもらったら、何らかの原因(?)でパソコンが不安定になっているとのことであった。仕事に支障が出ると困るので仕方が無く、緊急に新しいパソコンを購入して、このデルは修理に出すことにしたが、大きな出費を強いられた。

 その後、ADSLと光回線をめぐる問題は、日本有数の会社のS社でも起きた。私が、手伝った引越しにまつわる本当に漫才のような対応であるが、ここに詳細に書いても仕方が無いのでやめる。

   ひとつ重要なのは、「こうしたクレーム電話に対応している人は、派遣やアルバイトで、ほとんど権限を持っていないだろうと想像される」ことである。会社の本社で、指令を発している連中は、経営理念を口先で唱えながら、目先の収益しか考えていない。そう考えてみると「ブレーキの利かない車が、二度と放置されることはない」のだろうか。「古い牛乳は?」「原子力は?」「アメリカ産牛肉は大丈夫と、信じること」ができるのだろうか?

 悲しいけれど消費者は、一方的宣伝の中で、もっと情報を選別して、賢くならなければならない。いったい企業は、どうしてお金を出している顧客を、こうも平気で裏切り続けるのであろうか。

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<追記>

 先日の「ト・ト・トイレが無い」で報告した、東横線の大倉山駅にトイレがようやくできました。当コラムの影響で作ったとは思いませんが、実に戦前の1926年2月14日開通以来ですから79年の「トイレ無い歴」に終止符を打つという歴史的瞬間を迎えたのです。しかし、一日に4万8000人が乗降する(駅員の話)という駅に、男子用個室はたったひとつでした。これに対して、和歌山の廃線寸前の貴志川線の無人駅にもトイレがあったことを思い出すと、なんとも東急さんの考えていることが不思議です。

 もちろん、大倉山駅の中にパン屋、おにぎり屋、喫茶店などがあり、大きなトイレを作るスペースは十分あるのですから・・・・。

 これで「顧客満足が上った」なんていう報告書が、どこかで作られているとすれば、噴飯ものですね。誰か「満足要因」と「不満足要因の充足」は別物だという話をしてましたね。