CS関連書籍の独断書評?9
書評は、評価を本の題名等の後に星のマーク(☆)で、0〜5ケで表します。
書評第25号は (2021.5.31)
「歓喜の歌」 博物館惑星V
(著:菅 浩江)ハヤカワ文庫(2021.4.25) 評価:☆☆☆☆
です。
私自身、愛読書群であるSF本にCSを見出すとは思ってもいなかった。
でも、最近は直接CSを謳った本は少なく、あったとしても、「これCS?」と思う本がほとんどであり、
今、日本はCSという概念が消し飛んでいる思っていました。
しかし、この本は、最後の部分で、これぞCS!という部分があったので紹介したいと思います。
この本は「永遠の森 博物館惑星」という2001年にSFの賞を受賞したものの続編で、
2020年に単行本が発刊され、今年、早くも文庫本化されたものです。
「博物館惑星」というサブタイトルが示しているのは、1つの小惑星を丸ごと博物館にしたということ。
この博物館で活躍する新人の学芸員と警察官(?)二人の話が展開されています。
では何故CSなのか?
この博物館の仕組みは、およそCSを向上させる体制が整っていないのですが、あまり登場しないがキーパーソンが存在し、
この人の言動を通じて、新人の学芸員が、何を志して仕事を進めれば良いのかを悟るという場面が最後の部分です。
著者は、「博物館・美術館など」に愛着を抱かれているのだと思いますが、きっと不満も多く持たれているのでは。
その不満を見事に解消するために必要な事が、実はCSであり、CSによるES獲得である、という文章になっています。
もっとも、CS本を書かれる気はないのだと思うのですが・・・
何を言っているのか分からないと思いますので、P.267から、ほんの少しだけ引用します。
「この地がまるまる芸術に包まれる、お客も自分も満足する、」
当然、この前後の語も含めて、一層、CSの概念が理解できるのですが、自分たちの努力で小惑星1つを丸ごと芸術で包むと、
お客様が満足され、そして、自分も満足を得られる。正に、CSとESを言い表していると思いませんか?
ついでですが、良くCSが先かESが先かの議論がなされますが、私は、CSが先、ESが後だと思います。
これは単純に、お客様が先、という理解では困ります。
「お客様が満足を得られたこと」を知り、その結果が自分の満足に繋がるというのが正しい理解だと思います。
星4つの理由は、SFだから、ではありません。
小説の設定だから仕方ありませんが、CSを向上させる体制がないのに、何故かキーパーソンだけは見いだせる、
という小説の設定が気に入らないからです。また、実は、博物館惑星シリーズは3冊あるのですが、ネットで購入した際、
最初の1冊は後から届いたので、一番最後に読みました。
そして、3冊目の最後の部分のCSに繋がる部分の意味が分かったのです。何も知らずに、最初の1冊を読まなければ、
きっとCSが見事に描かれていると思わなかったと考えたから1☆減点です。
書評?第26号 (2023.8.15)
書評第17号関連:SAS(スカンジナビア航空)のサービス体感記
今更ですが、今年6月に初めてSASに搭乗した。ロンドン・ヒースロー〜ストックホルム・アーランダをSASで往復したのだ。
復路、ストックホルム・アーランダの出発に関しての話である。
1990年の本の内容が、今に根付いているか。これはCSにとって、とても重要な話だ。
私の搭乗予定のフライトの出発が遅延したのだ。私は15:25発のフライトが16:10に遅延するという情報を、空港の搭乗口で
見つけた。その少し後に、私のスマホにSASからSMSが飛んできて、フライト遅延を知らされた。
ここまでであれば、CSの良い事例と言えるかもしれない。ついでに言えば、SMS以外に電子メールも飛ばされていた。こちらは、スマホで
読むクセがないため、後から読んだのだが・・・
この遅延の原因が何であったかが問題だったのだが、空港の搭乗口でも、SMSでも、原因について何も言及されていなかった。もちろん、
電子メールのほうにも、原因の言及が無かった。
私自身は、ヒースローからのフライトが何らかの原因で到着が遅れ、その機がそのままヒースローに帰るため、出発遅延になったものと考え、
「仕方ないなぁ、これ以上遅れないで」と思った程度であった。ロンドン到着後に予定があったので、あまり遅延すると、予定に遅刻して
しまうからだ。
結局、16:10には出発できず、もう少し遅れて飛び立った。ここまでは良かった。
機長が急いでくれたのか、SASが急がせたのか分からないが、ヒースロー上空には、定刻より若干遅れた程度で到着した。もちろん、
ここまでも良かった。が、この後、
なんとヒースロー上空で随分旋回(多分5回)するではないか。結局、定刻より随分遅れて着陸し、予定に1時間以上遅れて行く
こととなった。
だから不満、という訳ではなく、遅延の原因がヒースロー空港が大雨で混乱していたためであると分かったからだ。
天候はSASの責任ではないけれど、遅延のお知らせが遅すぎたことが問題だと思う。つまり、私の搭乗予定のフライトの出発が遅延
することは、ヒースローを飛び立った瞬間に分かっていることで、その時点でお知らせが無かったのは、CS上、問題ではないかと思われた
のだ。早めに情報を受けていれば、別のフライトに搭乗するという代替手段が取れた可能性があるので、顧客側に立った情報提供を行う
のもCSとして重要視して欲しいと感じた次第である。
書評第17号との関連としては、CSは、技術の進展など社会の変化に合わせ、永遠に追及していくべき課題であると再認識した。
書評第27号 (2024.6.10)
「伝説とカフェラテ」 傭兵、珈琲店を開く
(著:トラヴィス・バルドリー、訳:原島文世)創元社推理文庫(2024.5.17) 評価:☆☆☆☆
出版社を見て分かる通り、CSに関する書籍ではないです。推理文庫となっていますが、ファンタジー本、SFでもありません。
たまたま読んでみて、CSっぽいな、と感じたため、書評を書いてみました。
恐らく、これからCSを学ぼうとする人には、CS本としても活用出来ると思います。
あらすじなどを書いてネタバレしては申し訳ないので書きませんが、最初、一度読んでみると、おもしろいのと、読み易い出のサッと読めるかと思います。この時、顧客の要望を上手に取り入れる点で、CSらしさを感じるのではないかと思います。
しかし、ここで終わらずに、じっくり読んでみましょう。
顧客の要望を取り入れる以前に、主人公の顧客への提案、すなわち、思い入れがあり、その実現のために準備を行い、また、仲間の意見も尊重するという姿勢が分かるかと思います。
この主人公の姿勢こそ、CSの原点だと思います。著者がCSを意識しているかどうかは分かりませんが、CSのことを理解している方ではないかと勝手に想像しています。
褒めておいて「星4つ」の理由は、この本の中に「啓蒙」という文字列が使われているためです。原文は英語のハズですから、わざわざ「啓蒙」という文字列を使う必要はないように感じました。「啓発」の文字列を使用して貰うと「星5つ」にしたいと考えています。
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